茨城を代表する新スイーツを共同開発

あさ川製菓株式会社のバックアップの下、地元食材を使ったオリジナル製品を開発

特別座談会 2年がかりのプロジェクト、長かった道のりを振り返って

常磐大学人間科学部健康栄養学科の学生5名が、「水戸の梅」「吉原殿中」でおなじみのあさ川製菓の全面支援を受け、荒田准教授指導の下、幅広い世代をターゲットにした地域ブランド商品の開発に取り組みました。市場調査からパッケージ作りまで、2年にわたる試行錯誤の末2製品が商品化され 、2012年9月20日、発売を迎えることができました。完成までの道のりを振り返ってもらいます。


「ぷよもち」

「常磐の宝箱 ポテトプリンセス」

みんなの意見の集大成が商品に地元で愛される定番商品を目指す。

荒田:2年にわたったこのプロジェクトで、ついに二つのお菓子が商品化されました。

根本:紆余曲折があったけれど無事、商品化できてよかったです。みんなの意見の集大成に満足しています。

永作:うまくいかずに悩んだこともありましたが、最終的に 一つの予定が二つも商品化できました。栄養教諭の実習先でも職員室やクラスで、「先生どうして新聞に載っているの?」と話題になったり、本当にありがたかったです。

内田:それまで手作りでしかお菓子を作ったことがなかったのでコスト面など、全て手探りでしたが、本当に商品化できてよかった。アルバイト先で、ご年配の方が 「ぷよもち」 を買っているところを見かけたときは、思わず 『私が作りました。ありがとうございます!』 と話しかけてしまいました (笑) 。

青山:私は商品開発に興味があってこのプロジェクトに参加しました。自分の考えたものが商品になるのだと、最初は 「自分が、自分が」 と意気込んでいたのですが、大量生産では効率の問題もあって諦めなければならないこともあったし、反対にみんなからアイデアをもらって視野が広がったり...。周りの意見を取り入れることの大切さを強く感じました。

比企:ときわ祭で試作品を販売したとき 「おいしい」 という声が多くてホッとしました。私たちは商品を完成させることがゴールですが、買ってくださった方はそれがお菓子との出会いであり、スタートなんですよね。

荒田:みんなが提案してくれたアイデアは、どれもおいしかったけど、商品化が難しかったり、何度も試行錯誤を繰り返しましたね。

根本:そのとき食べればおいしいというものばかりでしたから、賞味期限を担保できませんでした。サクサク感を出すにはチョコでコーティングすればいいと分かったけれど、設備の関係で断念せざるを得なかったり。

永作:初期の 「ぷよもち」 もそうでした。

荒田:どんなお菓子にしたかったの?

永作:でんぷんもちで、中身は芋あん。もちよりぷるんっとして、本当にぷよっという食感でした。

一同:すごくおいしかった。

根本:でも、1日で固くなり、作りたてのおいしさを届けられないんだよね。

青山:最初のころは賞味期限なども考えずに、ただみんなで食べたいものを提案していました。

比企:あさ川の職人さんは、私たちの 「もっと甘くない方がいい」 などの勝手な意見を解釈し直して、いつもおいしいものを作ってくれたことに驚きました。

檜山:私たち菓子業界にいる者には 「お菓子とはこういうものだ」 という固定観念があるので、今回のプロジェクトは若い人の率直な意見を聞く貴重な場でした。いろいろな壁を乗り越えたから、今の「ぷよもち」 ができたわけで、その過程にも大いに意味があったと思います。

伝統に新風を吹き込み幅広い世代の開拓、店舗の活性化につながった。

荒田:檜山さんにお聞きしますが、発売後の手応えや社内の評判はいかがですか。

檜山:「ぷよもち」 は今までになかった新感覚の和菓子で、「四季ごとに中身が替わるのが面白い」と幅広い年齢層に受け入れられています。今までのお客さまに加えて若い世代の方にも好評で、店舗の活性化にもつながっています。「ポテトプリンセス」は有機栽培の紅あずまの調達が難しいのですが、「イモの風味と、角切りりんごの食感のバランスが絶妙でおいしい」との声も多くいただき、私たちのこだわりも消費者の方々に伝わっているようです。今後も、長く愛される定番商品になるよう営業していきます。社内でも、140年の伝統を守りながら学生の感覚を取り入れて新しいことにチャレンジできたと評判です。

荒田:みなさんが一番苦労したことは何でしたか。

内田:賞味期限とコスト面です。

永作:甘さにこだわると賞味期限が短くなる。そもそもどういうことが大量生産に向いているか分かっていませんでした。

青山:保存方法も、冷蔵か冷凍かで悩みました。製造ラインの機械についても知識不足でした。

内田:「ポテトプリンセス」に芋けんぴをのせるアイデアもあったのですが、手作りの場合と違って、商品として世に出すには難しいことがあるということを学びました。

檜山:確率は低くても、芋けんぴの固い部分があって、商品化は難しいと判断しました。

荒田:私たち管理栄養士も食品衛生は一番重視することですよね。どんなにおいしくても食中毒を出したらその施設の評判はガタ落ちです。それにしても味に対するみんなのこだわりはすごかった。ただ単純な味ではなく、別の食材との組み合わせや、食感の面白さまで追求していました。

永作:もっと固い方がいいとか、甘さと塩味をミックスしたらどうかと試行錯誤したこともありました。

根本:クリームとクッキーを合わせたいけど、しっとりし過ぎるのでディップにしてみたらどうだろう、とか。

内田:試してみたらイモの風味が物足りなくなってしまって。

永作:「ぷよもち」 は、日持ちするように求肥や羽二重でも試してみましたが、でんぷんもちの食感には及びませんでした。これなら出したくないと、一端、全部白紙にしたんです。

内田:一時期、みんなすっかり落ち込んで、やる気を失っていたときに、工場長さんの 「まぶすものを色々考えてみたら」 というひと言がヒントになったんですよね。

永作:そう!それで初期のアイデアをもう一度試してみたら、味も見た目も色々なものができあがって、みんなで『かわいい!』って。

根本:初めてみんなの意見が一致した。それからは完成までは早かったね。

比企:日持ちの問題は、エイジレス(脱酸素剤)や包装を工夫して解決できました。

檜山:季節ごとに組み合わせを替えるアイデアもよかったですね。麦こがしは 「懐かしい」とご年配の方に好評ですし、若い世代にはりんごパイの評判がいいようです。

比企:おいしいから、あれもこれも加えたいと、四季の彩りを考えたんですよね。

永作:本当にがんばってよかった。納得いくものが作れるまで諦めずにがんばれたことが自信に。

荒田:このプロジェクトで何を得ることができたと思いますか。

比企:間に東日本大震災も起こってプロジェクト自体なくなるかもしれないと思ったけど、こうして販売に漕ぎ着けて、諦めないでよかったと思います。

青山:みんなで協力したからできたことだと思います。ようやく納得いくものができた、その達成感を経験できたことがよかったです。

内田:作りたかったものはそれぞれ少なからず違ったけれど、最終的に二つも商品化されてPRされていることがうれしいです。お客さまの立場に立って考えたからこそ、商品として完成できたと思うし、将来商品開発の道に進むかはまだ分かりませんが、食べる人の立場に立って考える姿勢はこれからも大切にしたいと思います。

永作:壁にぶつかったときは視点を変えることも大切だと思いました。始めた以上は責任がありましたが、諦めなければ道は開けると実感でき、自分の成長につながったと思います。

根本:ひとつのものを作る過程には職人さんをはじめ、営業、材料調達、パッケージデザインの方など、さまざまな分野のプロの方がいて、その方たちのおかげで完成できたと思います。各分野のプロフェッショナルの方々と知り合えたことは自分にとってすごく刺激になりました。卒業後は栄養士として病院に勤務する予定ですが、食のプロとして学んできたことを活かしつつ、プライドを持って働きたいと思っています。

青山:今回このプロジェクトに参加できなかった人たちの分もがんばることができた、と自信を持って言えるものを作れたと思います。

比企:私も仕事に就くときにこの経験をどう活かせるか、楽しみです。

荒田:根本さんと永作さんは以前にもセブンイレブンのお弁当の提案や、県庁食堂のヘルシーメニューの提案に関わっていましたね。健康栄養学科はもともと食べることが好きで、いろいろなところにアンテナを張っている学生が多いので、みなさんの取り組みには高校生も注目していると思います。

永作:こうした活動を、ぜひ後輩たちに引き継いでいってほしいですね。


開発までの道のり

2010.12 工場見学

あさ川製菓の製造ラインを見学。
地元銘菓がどう作られているのか、一同興味津々。次から次へと大量生産されるおなじみのお菓子の数々。一方、機械任せにできない工程も多く、熟練の職人さんたちの技が光っていた。

2011.2 市場調査

県内外の有名デパートを視察。
「自分だったらどんなお菓子をお土産にしたいか」、包装形体まで注意する。個包装の商品が多く、「小さめのお菓子を少しずつ」「たくさんの種類を手にとってもらう」ことを意識するように。

2011.7-10 試作品検証

もともと食べることに人一倍興味のある選抜チーム。
学生ならではの、ユニークで斬新なアイデアが飛び交う。新しい食材の組み合わせ、食感を求めて試食を続ける日々。ただ、この時点では「賞味期限」という要素については誰も気に留めていなかった...。

2012.3 商品化の最終検討

量産が可能か工場の設備を使って検討。
商品として広く流通するためには、日持ちすることが必須であることを知る。生クリーム、芋けんぴなど数々のアイデア食材がこの時点で候補から脱落。職人さん、工場長から商品化に向けた手ほどきを受ける。

2012.9 ついに完成!!

茨城の観光名所をイメージした和菓子「ぷよもち」と特別栽培の紅あずまを使った洋菓子「常磐の宝箱 ポテトプリンセス」の2製品が完成。ぷよもちは四季ごとに3種の彩りを、ポテトプリンセスは高級感と幅広い世代に受け入れられることを狙って優しいイメージの白のパッケージに。


プロジェクトのメンバー


「中途半端なものは出したくないというみんなのこだわりには本当に驚かされました」
人間科学部健康栄養学科 准教授 荒田 玲子

「みんなが納得できる製品ができたのは、とことん試行錯誤したからこそでしょう」
あさ川製菓株式会社 企画課係長 檜山 正秀さん

「諦めなければ道は開ける。自分の成長につながったと思います」
人間科学部健康栄養学科4年 永作 莉央

「一人ではとてもできない経験でした。周りの意見を取り入れることの大切さを実感」
人間科学部健康栄養学科3年 青山 栞

「私たちは商品化して終わりだけど、買った人はそれが始まり。長く愛されるお菓子になってほしい」
人間科学部健康栄養学科3年 比企 友里恵

「それぞれの分野のプロに刺激を受けました。私も食のプロとしてプライドを持って働きます」
人間科学部健康栄養学科4年 根本 哲紀

「お客様の立場に立ってとことん考えた、この気持ちをこれからも大切にします」
人間科学部健康栄養学科3年 内田 恵利香

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