2000年度・大学院・人間科学研究法 授業「評価」アンケート結果(2001/1/16実施)

昨年度同様にK学部の授業「評価」アンケート用紙を借用して定期試験と同じ時間に配布して実施した。試験の解答終了後に無記名で。ただし大学院なので受講生は8名(女子6名、男子2名)で、社会人入学者が5名である。6名はテスト提出と同時に、2名はテスト終了後に提出してくれた。

アンケート項目は4つのグループからなっている。

これらの質問に5段階の「評価」値を回答する。ただし、「あてはまらない・わからない」という選択肢もある。このほか、自由記述方式のコメント欄が用意されている。

以下集計結果を示す。なお、一部データ総数が人数と合わないところがあるのは、無回答あるいは「あてはまらない・わからない」との回答がいくつかあったためである。

図1は授業内容についての結果である。Q1-a(赤)は「内容・テーマに対する興味」を聞く項目である。すくないながらも評定値2が目立つ。この科目は選択必修であるために興味がなくても履修しているということだろうか。いくつかの科目の中から選択できるようになっているのだが、どの科目にもそれほど興味がない、ということだろうか。同様に、少ないながらも「わかりやすさ」(Q1-c;黄色)で1および2のランクがあることが目立つ。Q1-b(青)は「実務的・実際的情報」についての質問、 Q1-d(茶)は「授業は全体としてまとまっていたか」に対する回答である。

図2の青い棒グラフ(Q2-b)は「参考書・プリント類は役にたったか」という質問への回答である。しかし、「教科書の内容がわかりやすかったかどうか」という項目( Q2-a 赤)は評定値3がもっとも多く、それほどわかりやすかったわけではないようだ。ただし、教科書は使用せず、二三の基礎的な教科書を紹介して、そのなかから例題や図表類を利用した。配布資料(Q2-b 青)についてはやや良い傾向だが、まあフツーという感想か。

学部の類似の授業(心理学研究法)の評定結果と一番違う点は、「視聴覚教材が効果的に使われていたか」(Q2-c、黄色)という項目についての分布である。例年、学部ではこの項目の得点は高いところに分布するが、図2では「普通」の評価となっている。視聴覚教材はOHPと配布資料のみでパソコンのプレゼンテーションを使わなかったせいだろうか。なお、授業回数の1/3程度はパソコン実習(SPSS)であった。

図3は講義のときの話し方(Q3-a 赤)、進度(Q3-b 青)、質問についての回答(Q3-c 黄)についての結果で、これを見る限りでは、進度についてやや課題がありそうだが、全般てきにはそれほどおおきな問題はなさそうだ。

図4。授業への参加度(自己評定)はどうしたことだろうか。図1で考えた「授業内容への興味」があまりない、ことと関連しているのだろうか。

Q4(参加度の自己評定)を除き、Q1-Q3の評価値を個人ごとに平均した平均評定値の分布を求めた。とりあえず、Q1からQ3のこの平均値を授業「評価」値としてみよう。その得点分布は図5のようになった。おおむね3以上に分布しているが3を下回る例もある。これらの学生にとってはあまり満足のいく授業ではなかったといわなければならない。人数がすくないので、あきらかではないが、双峰性の分布のようにも見える。なお、個人別評定値の平均値は3.7(標準偏差0.8)であった。

図6は「参加度」と個人ごとの評定平均値(図5でもとめたもの)の関係をみたものである。データ数がすくないのでなにか傾向があるかどうかわからない。参加度の最頻値は3であるが、評定平均値の分布は比較的広い。このことから、自己の参加度と授業そのものの評価値は一応区別して評価されているようだ。

自由記述欄には2件の回答があった。

「t検定や分散分析のところでコンピュータ上でどのような処理が行われているのかを学ぶために、いくつかの例題を実際に手計算でやってみたかった」という感想があったが、これについては、宿題として明示されなくても、各自でおこなわれることを期待しています、と。

「難しかった、、(中略)、、よくわからないまま一年が過ぎてしまったように思います。勉強不足を感じます。またあまり理解できないので興味を持ってという点では今1つでした。」

「難しい」内容を「わかりやすく」というのが理想なのではあるが。大学院では私としてはほとんどの受講生が「難しい」と感ずる内容であるべきだと思っている。しかし、現実的にはすこし易しいところに設定してしまっているようにも感じている。

以上の結果をまとめると、評定平均値としてはまあまあではあったが、昨年度より低いものであった。しかし、学習意欲を向上させる(つまり授業内容の重要性についての認識の形成という)点には成功していない、ということだ。「熱心な講義をありがとうございました」と書いてくれた人もあったのではあるが。

本学のような比較的広領域の大学院ではいろいろなテーマがあるから、必ずしも統計的な知識が必要でない領域もあるかもしれない。しかし、参考書として「ハウツー本」を選択しているのを見かけるのは辛いものがある。修論のテーマや領域にもよるのだが、もし、調査や実験を含むものであれば、紹介した教科書の水準の勉強を続けることが必要ではないかと思う。