大学往来 

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99/08/08(日)見学合宿(最終日・8/4分)鉄道総合技術研究所・合宿最終日。

朝食時間を早めてもらい予定どおり7時(割り増し料金100円なり)。献立はごはんにみそ汁(わかめ)と塩鮭という一汁一菜でシンプル。大学に入学したばかりのころ、しばらくいた学生寮をなつかしく思い出した。

8時にセミナーハウスを出発。チェックアウトは9時から開始という「きまり」があって困った。4年生の一部が居残り、残務整理とチェックアウトをしてくれることに。

居残り組を残して、JR八王子までバスで移動し、国立駅着。北口にて増山先生と合流。10分ほど歩き、鉄道総合技術研究所に予定通り到着。

昨年同様に広報担当のiさんの案内で会議室へ移動し、まず15分ほどに編集された研究所紹介のビデオを見る。そのあと、各自訪問者用のヘルメットを受け取り、マイクロバスで所内を移動しながら説明を受ける。昨年度の見学コースとほぼ同じ。

最初は技研としても力のはいっている超伝(電?)導リニアーモータの説明を受ける。技術的にはすぐれているのだろうが、実際に運行されるのはまだ当分先のことのようだ。

 最初の新幹線の運転席付近

つづいて東海道新幹線の初期の車両が残してある台車検査工場。運転席も見ることができる。計器類などは非常に素朴な印象で、これで200キロちかい速度をコントロールしていたのかと思う。最初の新幹線の運転席や計器類の設計については特に説明がなかったが、人間工学的にはかなり工夫されたものとの話をなにかの本で読んだ記憶がある。新幹線では運行が集中的にコントロールされるようになってきて、運転手の役割もオペレーターに近いものになってきたという意味でも象徴的な運転席だ。(と、このような説明をしてくれるとわれわれ文科な人間にもおもしろいのではないかと思う。昨年iさんがときどき鉄道「オタク」が見学にきていちいち説明を訂正されるといって嘆いておられたのを思いだしたので、こんなツッコミは自重した。)やはりモノ自体が優先され、機能的な性能は記憶されることがないのだろうか。

速度調節のレバー。速度の刻印がある。

つづいて、新しい台車検査工場。こちらは規模・性能とも世界でも有数のものとのことだ。ここまでは工学的・技術的な見学だが、もうすこし人間工学の面での説明があるとよいと思った。

次は、衝突時の実験を行う研究室。米国製のダミー人形をつかって時速30キロメートルでの衝突実験が行われている。鉄道での車両同士の事故の多くは時速30キロメートル程度であることがその根拠だ。説明してくださったのは管理工学出身のi氏。人間の行動が関係するので心理学とも関連ある分野だ。

ある速度以上の衝突では人間の体はコントロールを失い、モノと同じような振る舞いとなるそうだ。シートベルトは万一の場合には有効と思われるとのことだったが、自由に車内を移動できるという鉄道の特徴が優先されているようだ。

最後に、乗り心地評価の実験室を見学。担当は心理学出身のk氏。二人掛けの座席がとりつけられた振動シミュレーター(4軸振動実験装置)でさまざまな揺れ方を被験者にあたえて座席の評価や乗り心地の評価を行う。人間の体はだいたい3ヘルツ程度の振動に共振するということで、披験者になった学生の様子をみていると椅子自体はそれほど揺れていないように見えるが、たしかに体はかなり揺れている。この分野はいろいろな乗り物について研究されていて、乗り物酔いの研究もあるそうだ。

マイクロバスで最初の会議室に戻り人間工学・心理部門関係のスタッフの方が3名出席してくださり質疑応答。技研の人間工学部門は管理工学・心理学出身者が活躍している部門である。ここでは、「適性」の研究(クレペリン検査、注意配分、知能検査)や、安全・疲労・エラーが伝統的な研究テーマだった。しかし、これらは時代・技術の変遷とともに変化していくことが必要だ。最近は快適性がテーマになっている、という話だった。

学生からもいくつか質問がでて、スタッフが回答に苦しむ場面もあった。素朴ながらまだよくわかっていないことがらはどの分野にでもあると思う。

最後に、心理学を勉強中の学生へのアドバイスを求めた。k氏はいみじくも技研は「人間科学の学際的研究」を行っていると述べられた。「研究所では大学で学んだ心理学そのままのことがらとは異なり、現実課題は学際的にクロスオーバーしている。したがって、幅広く隣接領域のことを学ぶことが必要だ。従来は、人間工学部門や心理部門はややもするとできあがったシステムの事後評価を行うってきたという意味で「下流」にたとえられてきたが、本来は「上流」においてシステム全体へ人間的要因をあらかじめ組み込むことが必要だ」、と述べられた。これは、昨年度見学したある家電メーカの心理学出身の方の意見と同じものであった。

事故や遅延時の人間の集団行動のリスク要因の研究はどこで行われているのだろうか。ソフト・システムにこれらの要因を組み込んでおく必要があるのではないかと感ずる。事後処理のまずさに由来する異常な遅延時の対応によっては、新たな事故をまねく可能性もあると思う。

 ニリアーモーター新幹線のモデルの前で、増山センセイと。

研修終了後、立川駅前の喫茶店で昼食をとり、上野にむかう。途中私は秋葉原をのぞいて帰ることにして、解散した。おつかれさま。


今日は夕方、香港から一時帰国しているK夫妻、名古屋から「栄転」で東京にもどったJ氏、S夫妻、私とかみさんで新宿にて会食。

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