大学往来 

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99/08/07(土)見学合宿(二日目午後・8/3分)科学技術館・懇親会

科学技術館(北の丸公園)には心理学関係の常設展示があるということで一度訪ねてみたいと思っていたところだ。夏休みで小・中学生向けのイベントが開催されていてにぎやかだ。

地下のカフェテリアで昼食をとったあと、自由行動で館内を見学した。心理学関係はイリュージョンの展示で、5階にある。かなり大規模な装置があるのだが、「知っている」所為なのか、どうもあまりおもしろくない。初めて見る人にはたしかに意外性は感じられると思うのだが、このようなイリュージョンが生ずるワケを知ることができるような説明なり展示方法があると良いのではと感じた。「ああ、へんな感じ」で終わってしまいそうな気がした。「驚き」は重要な要素ではあるのだが。心理学関係の博物館や常設展示がほとんどないのは残念なことだ。

館内の施設はカフェテリアはまあまあだが、「外国」の設備の良い博物館内のカフェテリアと比較すると、科学技術館の食堂はちょっと昔の学食状態で改善が必要だろう。売店はミュージアム・ショップとしての魅力に欠ける。ワークショップは科学技術館らしいよい味を出している。

夕刻、ラッシュ前に移動して、京王線で宿舎へ戻る。沿線で花火大会があるようで、車内にはゆかた姿の女性がちらほら。若い人の和風の装いはいいものであるなあ。

夕食は懇親会をかねて、豪華特別メニューを頼んでおいた。他の宿泊者の食事がだいたい終わる7時ごろから懇親会を始めた。席上いろいろおもしろい話がでたが、4年生のJさんのケイタイに頻繁にメールがはいってくる。あるセンセイについてのレポートのようだ。人ごとではなく私についても同じだろう。伝言ゲームみたいにならないことを祈るのみだ。

ケイタイのメールはすごい情報網になっている。ポケットベルへのメールで鍛えたテン・キイ入力世代はケイタイメールの普及に一役かっていることだろう。この調子で合宿の様子など友人間では知れ渡っているのだろう。「壁にケイタイあり」、というところだ。

最近の若い人は手紙など書かないのかと思っていたら、電車のなかで4年生のIさんと話したところ、みんなけっこう筆まめで時間があるとはがきなど書いているようだ。友達同士で手紙をよくやりとるするのだそうだ。やはりきれいな切手のはってある手紙やはがきをもらうのがうれしいと言っていた。最近では私はほとんどemailしか書いていないなあ、と思う。

明日は国立市で宿舎から比較的近いので、合宿もヤマを越えた感じがした。

8/4朝、宿舎内の林を散歩していてみかけた見事なweb。


きょうきのうは先日提出した成績表の確認届けをだしに登校。マークシートから読み込んだリストの最終確認である。出席原簿と照合して読みとりエラーのないことを確認して提出。水戸市は明日から「黄門さままつり」でメインストリートは提灯などが飾られて町町でテントが張られ、まつりの準備の様子である。

夏休み中の大学の停電・ネット停止の掲示。


99/08/06(金)見学合宿(二日目午前8/3分)

8月3日は午前中に五反田にあるA化粧品会社の研究所を見学した。

朝食のトラブルにもめげず予定通り五反田駅到着し、目黒川にそって10分ほど歩いた。最寄り駅は目蒲線の不動下だが、通勤時の混雑を考えて乗り換え回数を少なくした。暑い。ミネラルウオーターで水分補給。(最近はミネラルウオーターがキオスクで売られるようになって、甘い飲料水を飲まなくてすむようになったのはうれしい。ペットボトル問題はあるが、リサイクルに努めるようにきちんと分別ゴミでだす)

予定通り研究所に到着。増山先生と院生のSさんはすでに到着していて合流。研究所に勤めている大学の同級生だったI氏に久しぶりで再会。数年前に久しぶりの25周年の同窓会であって以来だ。I氏の案内で会議室へ移動。最初に、研究所の沿革と、行われている研究についてK部長によるプレゼンテーションを受ける。以下のような内容だった。

化粧の文化的起源・歴史的変化の話。Cosmeticsの語源(Kosmos、宇宙・秩序・(儀式的に)飾るから)や日本での化粧の歴史、民族的な化粧法などおもしろくまた意外な話題。30年代の世界恐慌のころの代表的女優の化粧とその後の米国が経済に強い時代の女優の化粧の比較から「眉の太さ」は不況と相関するという説などを聞く。

最近の研究の紹介では、「顔の研究」があって、MDS(多次元尺度構成法)をもちいた2次元解の解釈が紹介された(大人タイプー子供タイプの軸、直線的ー曲線的の2次元解釈、「ストレス値」は不明だった)。化粧による顔表情の変化の心理的評価(官能検査の領域)の研究である。この2軸で構成される空間の隣接する方向へは化粧によってイメージを変更することが容易であるとのことだ。同一人物の外観イメージというのは化粧・衣服などでかなり変わるものだと実感。

文化的あるいは心理学的にみた場合にはそれ自体非常におもしろい話だった。しかし、企業の研究所という性格からもっと「実質的な」研究成果が望まれているという。つまり、化粧品をつかうことで実際にどのような心理評価の変化や行動の変化が現れるのか、皮膚の変化はどのように改善されるのか、といった面での売り上げに貢献できる研究という意味であろうか。

この面では、消費者の変化やニーズに対応して、消費者の説得材料としての効果の定量的表示、肌の状態への個別対応(カウンセリング)の基礎研究が行われていた(消費者ニーズはメーカーによって作り出されている面もあると思われるが)。

肌や顔についての(くすみ、しわ、顔色などの)「物理的測定値」がきっちり研究されている。測定・評価機器は現在のパソコンで行うことができ、各店舗にこのような測定機器をおいてカウンセリングを実施できるようになっている、という話だった。

化粧の行動への影響とみられるものとして、老人ホームでの老人性痴呆症の人への化粧の効果の報告があった。ニュースなどにもとりあげらて有名な研究である。医療場面や心理的問題場面でリハビリにも化粧が効果を上げた事例が紹介された。これも行動的には「化粧」そのものの効果なのか、「他者」がケアーしてくれるということが機能的な効果を表したのかについては即断することはできないが、介護の現場では大きな変化が見られたということで反響を呼んだものだ。

最近の話題としてストレス評価のための「唾液」中のコルチゾール濃度の測定方法に関する紹介があった。化粧品各社は「癒し」系の研究が盛んになっている。これは化粧そのものから派生して、化粧することや、香りの「医学的効用」を明らかにすることでマーケットを開こうとするものであろう。このようなマーケティングに対応する技術が化粧品開発技術のなかにあったということだ。

プレゼンテーションのあと所内各研究室の見学。

肌の分析・評価システムでは、測定部分の化粧をおとす必要があるので、私が被験者に。CCDセンサーとハード(システム画面をちらと見たところではOSはDOSのようだった。たぶんCCDセンサーで脂肪や角質の色成分や形を計測して標準データ(代表的な皮膚の性質状態)と比較するようなソフトと推測される。比較データは女性の肌についてのものではあるが、「中年男性としてはよい」との診断結果だった。

つづいて、皮膚のしわ、くすみ、日焼けの色などの特徴を分析する研究室。

ある印象をあたえる「物理的な条件」を数値的に分析し、官能値の「代用指標」にする物理的測定値を求めるというスタイルの研究である。たとえば、どのような物理的特徴があるときにわれわれは「しわ」と呼ぶのか。心理物理学とカテゴリー判断の研究と同じテーマだが、研究所では工学的な解決が主要な目標であると感じられた。

「官能データ」から出発して「心理的評価に対応する(あるいは相関する)物理的測定値」を見いだし、それを客観指標にするという方向である。さらに、全体的な化粧の見栄えや印象を「客観測定」することが試みられているハズであろう。

次に、唾液中のコルチゾール濃度の測定機の開発研究室を見学。

家庭用の洗濯機ほどの大きさである。たばこのフィルター状の「わた」を口に含んで唾液を集め、円心分離して成分濃度を求める。血液や尿ではなく唾液から測定できることで利用範囲は広いと思われる。生理学研究室ではシールドルームがあり各種の生理的データの測定ができるようになっている。

過去の雑誌広告が展示された部屋も見学。掲載される雑誌を普段見ないせいか覚えているものは比較的少なかったが、印象にのこっているものもあった。見学を終え会議室に戻る。途中クリエイティブ関係の仕事が入っていたようでスタジオにスタッフ出入りしていた。

質疑応答のあと、最後にI氏が、「心理学は多くの分野との接点があるが心理学のみでは問題は解決できるものではない。研究室は基本的に異分野交流の場で、心理学出身の人は心理学のみでなくプラス・アルファが必要である。また共同研究を行う場合にはやはり「人間関係」が大切だ」、という話をされた。

心理学プラス・アルファが何であるのかは、I氏が感じておられるものとは違うかもしれないが、見学して感じたことでいえば、学際的にあらわれてくる解決すべき課題を、どの分野と協力して、どのようにやれば解決できるのかという見通し(カン)のようなものであるのだろう。また「人間関係」といってもそれはコラボレーションの技術という意味合いであろうと思う。

身近な化粧というコトガラをあつかう研究でもあり、学生にとってもかなり興味深く印象的な見学だったと思う。記念写真をとり研究所を後にして、午後から科学技術館(北の丸公園)へ移動。(所内は撮影を控えたので写真は記念撮影のみ)


 夕方、郷里の兄一家が柏を訪れひさしぶりに会食。甥のT君はもう高校生で背も高くなっていて驚いた。上のA君は都合でこられなかったのだが、今年短期大学に入学。みんな元気な様子だ。おそくなってしまったが、T 君、A君にそれぞれ入学祝い。
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