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6) 就職・転職情報


“激変”就職戦線、したたかな攻防 〜 即戦力求める企業 VS 情報武装する学生

(「回答」部分は日経ビジネス1999年3月8日号より)(99/5/22斉藤さんより)

--ことしの就職「戦線」はどんな様子?

『まだ就職先が決まらない4年生が最後の努力をしているのを尻目に、4月から新しく4年生になる学生の就職活動が既に始まっている。住友銀行やNTTドコモ、伊藤忠商事などでは選考に関係のない業界セミナーを2月までに開催。企業の採用活動が本格化するのは4月以降だが、一部のテレビ局や外資系などでは選考を開始した。』

--人材発掘主義に変化しているんだって?発掘って考古学のあれ?

『大学卒業生の就職難は、企業が採用数を減らしていることだけが理由ではない。企業の採用方法が質的に変化していることも大きく影響している。日経連教育部の鈴木次長は、「大学名で採用する時代は終わり、戦力になる人材に絞って採用する‘発掘主義’が目立ってきた」』とのことだ。

--具体的にはどうやって人材「発掘」するのかなー?まさかスコップでは無理だよねー

『<ソニーはエントリーシートで選抜>

 エントリーシートとは、企業が就職を希望する学生に提出させる身上書のことだ。かつて就職に付き物だった履歴書と違い、氏名、連絡先や経歴の他に自己PRや志望動機など文章を書くスペースがたっぷりとあるのが特徴だ。出身大学に頼らずに学生の適性を見極めたいと考える企業に急速に普及した。日経連が実施した調査では約30%の企業が取り入れている。

 多くの企業はまずエントリーシートほ提出させて、そこから採用の面接に呼び出す学生を選抜する。エントリーシートが採用担当者の目にとまらなければ次の選考に進めない。最初にエントリーシートを用いたのは、91年度に学校名不問の採用に踏み切ったソニーだ。ソニーのエントリーシートは、入社後の希望職種、学生時代の経験を細かく聞くもの。職種は海外営業、商品企画などの12の仕事から選択し、そこで実現したい目標まで書かせる。学生時代の活動については99のモデル事例の中から3つまで選ばせ、具体的な内容を記述させる。モデル事例には「ROE・キャッシュフローなどの指標を使い、ビジネス分析ができる」「バックパックを背負って10カ国以上を旅した経験がある」など具体的なものが多い。いずれもソニーの企業研究をしっかりとした上で、自分を見つめ直さなければ書けない内容だ。』

--ふーん。なるほど「自己」をはっきりとプレゼンテーションしなければいけないというわけだ。それでどんな人が「のぞまれているのだろう」

 『ソニーの人事部門は、95年に同社で成果を上げた社員数十人について行動特性を調査、共通する行動原理を「先見性」「達成指向性」など11項目にまとめ、面接官の着眼点にしている。「コンピテンシー」(成果を生む行動特性)を独自に新卒採用に応用したものだ。面接でソニーで活躍できる社員に共通の行動特性を確認し、入社後に戦力となり得る学生だけに絞って採用する。』


--学生側も黙っちゃあいまい?最近目立つのは「《学生もネットで団結、厳しく企業選別》」という動きかなー。

 『企業が採用方針を厳しくしてきたのを受けて、学生も変わり始めた。大学生向け就職情報誌「日経アドレ」の速水編集長は、「企業の変化に気づき、自分が何をしたいか明確に意識している一部の学生は簡単に希望通りの就職先を得ている。そうした学生と多くの学生の間で意識に差が出てきた」と指摘する。』んだそうだ。

--就職協定の影響は?

『 就職協定が廃止されて2年目の昨年、企業の採用のタイミングは就職協定があった時代より早まったが、一方で選考期間も長くなった。日本労働研究機構が実施した調査では、98年には6月に採用を終える企業が97年に比べて10%以上増えた反面、10月過ぎまで採用期間を長く設けている企業も多い。企業も学生もじっくりと採用・就職に取り組む余裕が生まれた。』

--これは卒論担当の先生は困るかもね。卒論にもしっかりとりくまないと面接では聞かれることが多いと思うよ。

--インターネットの「威力」については?

『<インターネットで採用動向が丸裸に>

 企業と学生の関係を大きく変えたものがインターネット。まず、学生が‘情報武装’した。かつては企業の採用動向はせいぜい周囲の友人同士で情報交換するか、就職情報誌などで一般論を聞きかじるだけだった。ところが今では、企業の動きはその日のうちにインターネットで万人の知るところとなる。なかでも威力を発揮しているのが、学生が自主運営しているホームページ。企業の採用動向、面接の内容、果ては入社試験の内容まで事細かに流れる。』

--たしかに、以前はとんでもない発言や質問もだまっているしかなかったわけだ。これで「人権侵害」やいろいろなハラスメントの抑止効果があればいいね。

『 ネットを通じてすぐに情報が広まる動きに対応策を取った企業もある。東京海上火災保険では面接時に書かせる作文のテーマを30以上も用意した。作文を書き終えた学生がネットで情報を流すために、1時間おきにテーマを変えられるようにしたのだ。』

--ううむ敵もさるもの。でもインターネット情報は玉石混交。ウソ情報もないではないので情報の取捨選択を間違えないようにね。

 『もちろん、学生ばかりが有利になっているわけではない。インターネットを通じて企業による学生選別の動きにも拍車がかかっている。一例を挙げるとリクルートのホームページだ。ここに学生が登録することで、企業から個別にネットを通じて就職情報を得ることができる。学生が登録する際に、大学・学部名にはじまって、英語検定やTOEIC、パソコンなどの資格情報まで事細かに書き込まなければならない。実はこの内容をもとに、企業が狙いとする学生だけに採用情報を送ることができる仕組みになっているのだ。リクルートでは「大学名で選別することは推薦していない」と言うが、システム上はそれが可能になっている。』

--リクルートさん。また変な「偏差値ビジネス」始めないでね。

 『また、インターネットで知り合った同じ業界を目指す学生同士が勉強会を開いて、熱心にその業界について議論しあう動きも広まっている。買い手市場で企業が圧倒的に強い立場にいることは間違いないが、学生もまた厳しく企業を選別する目を養い始めている。』


--応募の時の心得はどんなもんでしょ。

『<募集段階から配属先を決める伊藤忠>

 あらかじめ入社後の配属先を決めて募集する企業もある。伊藤忠商事は、情報通信や繊維、食品など事業部門別に分社化した97年から、全体の採用予定数の半数を各子会社が独自に採用できるようにした。宮田人事部長代行は「これまでの全社一括採用では『商社に入社したらどこに配属されるのかわからない』という不安を感じる学生も多く、理科系の学生が積極的に商社を希望することを妨げていた」と言う。実際に分社ごとの採用を開始してから、理科系の学生の志願者は以前の1.5倍に増えた。文科系の学生でも夜間にファッション専門学校に通っていた学生が繊維部門に応募してくるなど、明確な目的意識をもった学生を集めることに成功した。逆に言えば、とにかく商社に入社したいが専門的な知識が乏しい学生には狭き門になってきている。』

--だんだんきびしい要求が課せられるようになってきているのだね。

『 「有名企業だから入社したい」と考える目的意識が希薄な学生を門前払いしようとする企業も現れた。旭化成工業は98年11月から毎月1回、48人の学生を集めてビジネスゲームを行うイベントを始めた。集まった学生はいくつかのチームに分かれ、旭化成と同じように多分野で事業展開する企業の経営者となって業績を競う。採用に直結するイベントではないが、経営を疑似体験できるゲームを通して旭化成のビジネスを知ってもらおうというのが狙いだ。人事部の伊庭課長は「イメージで受験されては当社も迷惑、学生にとっても不幸なこと」と言い切る。』

--有名企業に集中するのはそれこそ情報収集能力が低いとも言えるなー。インターネットによって広く情報収集できるようになったのだが、集中化に拍車をかけている面もあるようでは、まだまだだなあ。

『「買い手市場」を優秀な学生を確保するチャンスととらえ、採用方法を変えて人材を厳選する企業は今後も増えるだろう。大学を卒業しただけでは就職がおぼつかない時代になっている。』ということだが、

--経済動向はまだまだ学生にとっては不利な状況だ。しかし、それは企業側も同じだ。そこで従来方式とは異なる人材発掘を行おうとしている企業も増加しているわけだ。しかし、これは学生側にとっても「乱世」というチャンスであるわけだ。



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