2001年度秋セメスター・知覚心理学特講・授業日程

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痛みの心理学

(1) 痛み感覚

  • 痛みの性質
  • 痛みの種類
  • 痛みの測定(痛み尺度、行動的測定法)
  • ゲートコントロール理論

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(2) 痛みの臨床

  • 実験痛と臨床痛(鎮痛効果・信号検出理論の適用)
    • プラシボ反応
    • プラシボ反応の分類
    • 「教示」効果の実験(久下沼さん卒論実験)
    • 条件反応?(富岡君・卒論実験)
  • 特殊な痛み
    • 「幻肢痛」 

 

  • 佐藤(編)「痛みのはなし・研究から、臨床から、実践から」日本文化科学社
  • 東山・宮岡・谷口・佐藤「触覚と痛み」ブレーン出版2000
    • 第2部(10章〜16章が痛み感覚について)
  • R.メルザック・P・D・ウオール「痛みへの挑戦」誠信書房1986 (R.Melzack & P. D. Wall, The Challenge of Pain, Penguin Books, 1982)
  • 信号検出理論についてはちょっとややこしいので、「心理学に必要なコンピュータ技術」の第2章を参考にしてください。
  • 幻肢痛についてはラマチャンドラ「脳の中の幽霊」
  • メルザック「幻肢」日経サイエンス1992.6月号

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情動の知覚

  • 情動知覚の二要因理論
  • 堀哲郎 脳と情動:感情のメカニズム 共立出版(第8章 情動体験)にくわしい解説があります。

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情動の知覚2

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  • 食行動と空腹感・味覚
  • 体型についての自己知覚

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空腹・渇き感覚と食行動

  • 一般感覚
  • 動機づけ
  • 摂食行動(ダイエットはなぜ成功しにくいか)上記ジンバルドー参照
  • 食物の好き嫌い(食物嫌悪)
  • 拒食・過食
  • 体型についての自己知覚
  • 食事行動の多様性と特徴
  •  
  • R.Schmidt (Ed.)感覚生理学 金芳堂 1980 第9章 渇きと空腹
  • ジンバルドー 現代心理学II  サイエンス社(9章ホメオスタシス機構としての生物学的動因)空腹と摂食)
  • 現代基礎心理学(8)東京大学出版会 第1章 動機の行動論的機制

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味覚と嗅覚(1)日常的なかかわりと感性研究の産業的応用

  • 嗅覚(基本臭についての諸理論)
  • 嗅覚の役割
  • 嗅覚の理論

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味覚と嗅覚(2)

  • においの生理学的効果・心理効果
    • 基本的な実験法
  • 嗅覚の測定法
  • 嗅覚の障害

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味覚と嗅覚(3)センソリー・テスト(産業における味覚の研究・応用)

味覚の基本的な性質

  • DIME 1995,11/2号Business Wars”新食感”をつくれ
  • 基本味覚
  • 味覚の心理物理学 

官能検査(Sensory Test)や心理測定技術は産業界で非常に応用範囲が広く、これらの技術は心理学の基本的な方法(心理物理測定法・心理検査法・イメージ調査法)が基礎になっており、心理学を生かすことのできる領域だ。 

  • 佐藤信 官能検査入門 日科技連 1978や新版・官能検査ハンドブック(日科技連)などがよいが、準備が必要な部分はちょっと難しい。
  • 増山栄太郎 センソリー・エバリュエーション p.68-78(味覚の特徴)
  • 佐藤昌康(編)味覚の科学 朝倉書店 1981、p.197-243(味覚の心理学的基礎、味覚と嗜好)、p.269-272(官能検査)
  • R.Schmidt (Ed.)感覚生理学 金芳堂 1980 第7章味覚の生理学

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官能検査法(つづき)

聴覚(1)

  • 音とはなにか
  • 言葉の理解
  • 耳のしくみ
  • 音源定位

聴覚の性質聴覚:「音の科学」基本的な聴覚感覚のデモ

  • 可聴閾
  • 音の三属性(高さ、大きさ、音色)
  • 充填現象(失われた情報を補う働き)
  • 無限音階
  • 時間的制約
  • 音の遊び:伝統的な音のしかけ、建築音響設計

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聴覚(3) 聴覚障害とその補償:補聴器の歴史

  • 聴覚障害の測定と基準 

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聴覚(3) 聴覚障害とその補償: 人工内耳装着における知覚・発達心理学的問題

  • 音刺激の分析と記述(音の心理尺度・音のスペクトル表示)
  • 音声刺激の特徴(フォルマント構造)
  • 音声の知覚:カテゴリー知覚
  • 音素知覚学習(乳幼児)音素知覚学習(成人)
  • 山田恒夫・足立隆弘「英語リスニング科学的上達法」講談社ブルーバックス(1998)

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聴覚(3) 聴覚障害とその補償: 人工内耳装着における知覚・発達心理学的問題(つづき)

音楽の知覚

騒音

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休講

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触覚

  • 知覚の基本としての触覚
    • 触覚の心理物理学的研究
    • 視覚との類似・相違・相互作用
      • 触覚における現象(仮現運動)
      • 「ピノキオ効果」
  • 触覚を利用した感覚代行研究

触覚を利用した感覚代行の研究については、市川ほか(編)視覚障害とその代行技術 名古屋大学出版会1984、第4章知的活動の補助を参照してください。触知覚における「仮現運動」現象については同じく、第3章をごらんください。論文ではゲルダード、F.A., シェリック, C.E.、触覚の跳躍現象を探る、(日経)サイエンス、1986/9(vol.16,No.9),p.94-101.が読みやすいでしょう。

温・冷感覚

  • 温・冷感覚の心理物理学
  • Weberの三つの器の実験 R.Schmidt (Ed.)感覚生理学 金芳堂 1980 第3章 体性内臓感覚能(温度感覚)p.102-111
  • 東山ほか「触覚と痛み」ブレーン出版2000第一部

時間と空間

  • 時間の知覚
    • 時間の概念
  • 空間の知覚
    • 空間の幾何学
    • 小空間・中規模空間・大規模空間
    • 移動と方向(盲人と健常者の空間知覚)
    • 認知地図
  • 身体と空間・パーソナルスペース

「手応え」の世界:アフォーダンス理論

感覚間の相互作用:共感覚現象

「生きられる」世界

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定期試験(ノート・配布資料のみ持ち込み可)教室変更あり

意識とはなんであろうか。認識の諸相

(1)「見えない」知覚

  • いき値とはなにか。
  • いき下知覚現象は存在するか。これらの問題を知覚心理学の歴史に登場する代表的実験を通じて考えてみよう。
  • プライミング効果

下条信輔「サブリミナル・マインド」中公新書 ()

本田仁視「意識・無意識のサイエンス:症例と実験による心の解剖」福村出版(2000)

(2)「存在しない」知覚:幻覚

  • 薬物と変性意識体験 幻覚発動剤( LSD、大麻)や種々の習慣性薬物(アルコ−ル、タバコ、カフェイン)は変性意識状態をもたらす場合があり、特有の感覚・知覚的体験をもつことがある。
  • このような幻覚および知覚現象の科学的な研究については、シーゲル、R.K. サイエンス、1977,12月号、8−17.

(3)「間接的な」知覚

道具を媒介とした知覚。バイオフィードバック手続きのようないわば道具を媒介する「間接的な」知覚と新しい心身観について解説する。バイオフィードバックについては多くの書籍がありますが、R.M.スターンほかバイオフィードバックとは何か:心と身体の健康法、紀伊国屋書店、1983

(4)直感などのような感覚受容器の明確でない知覚体験について

(5)推論

リスク・不確実性・偶然性の知覚

知覚と芸術

対人知覚・自己知覚

動物心理物理学

人の感覚能力もすぐれて精緻なものであるが、人以外の動物もすぐれた感覚知覚能力をもっており、むしろ人をしのぐ能力を示すものも多い。これらの諸能力を人間のそれと比較して見よう。

  • 動物の感覚知覚能力を調べる動物心理物理学の諸技術
  • これらの研究を通じて動物はどのような知覚的世界を生きているか(ユキュスキュルの「生きられる環境世界」)を探り、感覚能力の神秘に触れる。

人間の認知機能の源初的形態として近年動物の認知能力が調べられている。これらの研究にもふれ、人間の知覚・認知能力の特質を理解しよう。

知覚と行動・知覚の発達

知覚の発達理論(分化説)・認知的な知覚論(二要因論)・知覚と文化をとりあげ、まとめとする。

  • 分化説については、R.S. シーグラー、子どもの思考、誠信書房、1992 第5章知覚の発達を参照してください。
  • 共感覚については、山梨正明、比喩と理解、東京大学出版会、1988。月刊言語1989/11月号、特集五感の言語学、を参考にしてください。7 知覚の理論

文化による知覚の制約 「私」の知覚は他人の知覚と同じなのだろうか。異なる文化に育った人々の知覚様式は異なるのであろうか。この単元ではこのような疑問を巡って、

  • 音声のカテゴリ−知覚の研究 (乳幼児はことばをどのように知覚しているのか)
  • 色彩語の文化間比較研究(認識人類学的研究)
  • さまざまな知覚現象の異文化比較研究を紹介し、感覚・知覚の文化的制約を考えてみよう。

まとめとして、知覚・記号化・認識過程を、同調現象・弁別・「身分け」・「言分け」をキイワードとして再構築し、「知覚は行動のためのデッサンである」というこの講義の主題のまとめにして、人間の全体的な「生きられる環境世界」を想像してみよう。

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