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2002/9/23(月)秋学期はじまる

今日は休日だがハッピイマンデイ対策のため今日から秋セメスター開始。日にちを任意にかえてしまうのであれば、いっそまとめて秋にも黄金週間を設定するほうが、週サイクルで動いている大学では助かるのになあ。

2年生の実験実習はSD法(ただし因子分析は3年次で。3年で春にやったものとは課題が異なる)、3年生は「サーストンの一対比較法」。どちらもちょっと難しいところがあるのだが、やはりやっておいた方がよいだろう。直前まで刺激や反応用紙の準備。早くやっておけばよいのだが、とのどもとすぎれば、でちっとも学習できない(というようりも学習してしまったというべきか)。

合宿に参加してくれた4年生のKさんから「楽しかった」というメールがきてほっとしているのだが、見学合宿の「宿題」もある。これまではともかく「現場」を見よう、ということで、つまり、勉学の目標設定のスターターとなることを期待して実施している。しかしながら、事前準備や予備知識がもう少しあれば、双方にとってより実りあるものになることもたしかだと思う。見学先の都合もあるので早期に予定が立てられない、という悩みや、日程の制約もあるのだが。

見学先については、学生諸君の「企画」も期待したいところでもある。一日二カ所はちょっときついかもしれない。ただ、一カ所だと時間をもてあますかも。費用と日程が許されるものであれば、一泊二日で2カ所見学、というのを何度かやるとよいのかもしれない。

また、見学先ではわからない点や興味あるところは是非「質問」をしてみてほしい。数年まえの見学でK君はたしかに素朴な質問をしたのだが、それは専門家をこまらせる(ある意味で本質的な疑問)でもあるのだ。また、それがきっかけになって、より詳しい話やおもしろい話を聞くことができるものなのだから。これはたぶん授業においてもそうだろうし、日常いたるところにあてはまる。


2002/9/21(土)見学合宿(二日目9/18 午後 日本色彩研究所)

新北海園で飲茶を楽しんだあと、六本木交差点を経由して15分ほど歩いて時間ぎりぎりで西麻布の日本色彩研究所へ。私が学生だったときに色彩関係の研究もされていた先生がおられた関係で、主に心理尺度構成についての基礎実験で日本色彩研究所製の「色紙」が使われていた。先輩方はほとんど「色研」と略して呼んでいた。色彩関係では伝統もありよく知られているし、私もよく名前は聞いていたのだが、見学するのは今回が初めてであった。

G大学の心理学の出身で心理調査を担当しておられる名取さんが対応してくださった。色研は六本木のほかに岩槻市にスタジオがあって、色紙の制作などはスタジオのほうで行われているということだ。

最初に研究所の沿革・概要を説明された。創設は1927年にさかのぼり、和田三造画伯(「南風」という作品で有名、美術の教科書にも採用されている)によって日本標準色協会として設立されたものである。米国でマンセル表色系をつくったマンセル氏もやはり画家であった。

「色」というのは心理・物理現象なので、研究分野は多岐にわたる。日常接するほとんどのものには「色」がついている。したがって、関連する分野は非常に広い。しかし、色彩を専門にしている企業は意外に少なくて、財団としては色研のみで民間の企業も4社ほどであるということで、狭義の「色彩の専門家」としての仕事は狭き門でもある。

(しかし、もちろん各企業では独自に色彩管理やクリエイティブの部門を抱えているところも多いので、「業際」的には可能性は非常に高い。これは「心理学」(に限らず、一般的に単独の「専門科目」)のみでは現実の問題を解決できないために現実場面での「心理学の応用」にあたっては人間科学的学際的・総合的センスが必要なのではないかと思う。)

現在、色研の定点観測的な事業として1954年から銀座街頭での流行(色・ファッション・年齢などの)調査が継続されている。また、日本人の色の好みも継続して調査されているそうである。このような長期にわたる調査は類をみないので貴重な資料になると思われる。

色研の事業実績は多岐にわたるが、最近では各自治体が地域の特色をだすために景観管理にのりだしていたり、いわゆる「感性工学」的なものも目立つ。色彩は先にのべたように心理・物理現象であるから、複雑で一筋縄ではいかないところが多い。また、単色の表色系はほぼ完成しているのであるが、色彩相互の関係、好み、象徴性などはまだまだ未解決で未知の領域が多い分野でもある。

いろいろ説明をしてくださった名取さんは「記憶色」や「色彩の好み」の研究をてがけられておられる。色彩検定などを受けている人には「カラーコーディネイターのための色彩科学入門(日本色彩研究所)」でおなじみかもしれない。この本は非常にわかりやすくかかれた色彩についての教科書であるが、名取さんも分担執筆されている。「記憶色」の問題はカテゴリー認知との関係で私も興味のあるところである。また、身近なところでは(通信販売や建築材料などの)「小サンプル」と「実物」との一致の問題などもいろいろ研究の余地があるように感じたし、具体的でおもしろい技術だなあと思ったのは「標準限界色票」だった。これは製品の色管理につかわれる色チャートである。これは管理しようとする対象それぞれに特製しなければならないものだが、色研では色の混合や塗りの「職人」的な技術者がおられるので可能な製品なのだろう。プロジェクトXのテーマになりそうな世界だ。

 見学の記念にいただいた配色カード

最後に卒論のことなどを聞かれたのだが、色彩関係の卒論をテーマにしている人にはなにか質問をしてほしかったのだが、みんな遠慮深いなあ。またわからないことがあればメールでどうぞ、といってくださる。どうもほんとうにおいそがしいところありがとうございました。

見学を終了して、日比谷線・銀座線で上野駅へ向かう。新しくなった上野駅で解散。と、いうことで今年度の見学合宿は無事終了。どうもおつかれさまでした。


2002/9/20(金)見学合宿(二日目9/18 昼食:新北海園)

午前中資生堂の見学のあと、西麻布にある日本色彩研究所へ。移動は新しい南北線で「六本木1丁目」へ。西麻布へはちょっと離れているが、六本木一丁目からすこし下って飯倉交差点の近くにある「新北海園」に寄りたいなあ、とのもくろみで。ここは前から一度来てみたい店だったので。若い人はほかに行ってみたい店もあったかもしれないが、私の趣味につきあってもらった。

運良く円卓の個室二部屋が空いていた。昼のメニューには飲茶のランチで1500円と2000円のセット(それぞれ二つのコース)があって、1500円のコースでも天心6品にチャーハンか麺を選ぶことができる。これで十分と思ったので、1500円のAコースにした(えび蒸しぎょうざ、大根餅、春巻き、小龍包、イカの蒸しもの、五目蒸しぎょうざ、チャーハンと胆胆面担担麺を半分ずつ。ただし、飲茶のセットは3名から。「純北京料理」って書いてあるのになぜ飲茶、というつっこみはこのさい却下。ほかには週がわりのランチ定食セットが1000円のと2000円の)。

店に入ったとたんに、支配人らしき方やウエイトレスの話すちょっとなまりのある日本語や中国語がとびかい、雰囲気や「におい」が香港やシンガポールにある庶民的な中華料理店にとてもよくにている。気取ったところがなく、でも、きちんとしていて、活気のある中華料理店の雰囲気が好きなのだが、新北海園もこれらの条件を満たしていた。店の方もメニューの説明をよくしてくれるし、接客もフレンドリーだ。料理はすばらしいものでおおざっぱなようでいて非常に繊細、香菜のほのかな香りのする「本格派」だ。これが1500円というのはおどろきであった。これはもう一度出直してくるべきだ。こんどオフしませんか、って意味不明。(若い人はこのような中華料理にあまりなじみがないのかもしれない。ちょっとおおげさかもしれないが、中華料理のイメージが一変したのではないかと?)

 給仕してくれたきれいなウエイトレスさん。

昼食後、西麻布の日本色彩研究所方面へ。途中巨大なビル建設や地下鉄工事で変貌をとげている。 


2002/9/19(木)見学合宿(二日目午前:資生堂)

合宿二日目(18日)は午前中に目黒・不動前から5分ほどの資生堂ソフト&コミュニケーション本部・ビューティサイエンス研究所の見学を行った。昨日の雨もあがりあさからさわやかに晴れた。途中新宿駅で二日目のみ参加の4年生2名と待ち合わせ合流。

 合宿二日目の朝。D棟9階にあるレストランさくらから眺めた新宿方面。手前の建物が青少年センターの一部(B棟)。画面に私の像が映り込んでいて見苦しいが、青少年センターの建物の雰囲気が一番よくわかるのがこの写真だったので。

移動中ハプニングもあったのだが、なんとかほぼ時間通りに研究所に到着した。今年は根岸さん、篠崎さん、平尾さんに対応していただいた。おいそがしいところどうもありがとうございました。最初に根岸さんのご挨拶と概要説明のあと、研究所紹介のビデオ(DVD)からスタート。資生堂のビデオはわかりやすく洗練されている。毎年アップデートされている。根岸さんのお話では「化粧」は生活を豊かにしていくものとというように考えられていて、ソフト的な提案が重要になってきている、ということであった。また、「生活者」の意見や情報は非常に重要でそのためにソフト&コミュニケーションセンターも銀座にもうけられている。

広い意味での心理学の応用について「現場」を見学しよう、というのが合宿の趣旨なのだが、実験心理学の出身の平尾さんには意図をさっしていただき、とてもわかりやすいプレゼンテーションをしてくださった。

プレゼンテーションは次のような内容だった。

最後に平尾さんは企業の研究室に在籍されてきたご自身の経験から「心理学の知識を産業的に応用することはまだまだいろいろなところで可能性は大きいと思う」と述べられた。これは私がまさに見学合宿を計画するようになった「動機」であり、我が意を得たり、という思いだった。「心理効果」や「心身効果」の測定法にはまだ決まった「ものさし」があるわけではないので、このあたりが心理学関係の研究者の「腕のみせどころ」になるものと思われる。このようなはなやかな化粧という分野ばかりでなく人間がかかわるそれぞれの「現場」についても同様にあてはまることではないかと思う。

このあと、所内各階の研究室や調査室を案内していただいて、時間を少しオーバーして見学を終えた。おいそがしいところ本当にありがとうございました。おおいに勉強になったし、学生諸君にもよい刺激になったのではないだろうか。研究所前で記念撮影をして、次の見学先である日本色彩研究所のある六本木方面へ移動。


2002/9/18(水)見学合宿(初日:自動車安全運転センター:安全運転中央研究所)

昨日からゼミで見学合宿にでかけていた。今年は一泊二日の日程。昨日は水戸のひとつ先の勝田駅から車で20分ほどの所にある「安全運転中央研修所」を見学し、夕方東京に移動し宿舎は昨年同様で代々木にあるオリンピック記念青少年センターに一泊。(昨年も書いたがここは設備も良くて安価で便利)今日は午前中に五反田にある資生堂の研究所、午後から西麻布の日本色彩研究所をそれぞれ見学させていただいた。昼食は、一度行ってみたかった六本木の新北海園で飲茶ランチ。満足。

宿舎のロビーにある大型テレビには日朝会談の模様が映し出されていた。絶句。昨年の合宿は9.11の翌日で、このスクリーンをみつめる若いアメリカ人らしきグループがあった。今回は人影はなかったことが、偶然であるがなにか象徴的。今後の経過が心配。

見学初日は予定通り17日の10時にJR勝田駅に集合。見学準備と日程設定に大変お世話になったMP社の菊池さんと合流。工事中だった駅舎が完成して新しくなっていた。あいにくの雨模様だったが、タクシーに分乗してひたちなか海浜公園近くにある「自動車安全運転センター:安全運転研修所」へ。センターでは櫻井さん、佐藤さん、柏原さんに対応していただき、恐縮。見学は午前中所内のツアー、所内の食堂で昼食をとり、午後から「理論研究」部門の見学を行った。 

見学は研修所の概要を説明したビデオテープからスタート。安全運転センターは世界的にも類をみない大規模なもので、走行コース、宿泊施設、教室などの設備が整えられている。運転時の極限状況を再現できる道路設備が整えられている。ハイドロプレーン現象によるタイヤのロックや、大雨による視界の制限を実際に再現し、判断訓練が行われている。

ビデオによる説明のあと、佐藤教官が自らマイクロバスを運転されて、サーキット内を移動しながら、要所要所で説明をしてくださる。すべりやすい道路(摩擦係数の小さい路面)を再現したところで、アンチロックブレーキシステムの効果を体験した。さすがに運転技能はすばらしく中型のマイクロバスだったが、狭い通路もふつうの乗用車なみにコントロールされていた。コースでは救急車両(消防、警察のパトロールカー)やトラックの実技指導が行われていた。

(ちなみに秋の交通安全運動の一環?として近く「白バイ隊」の技能コンテストが開催されるそうである。白バイ隊の二輪の技量はすばらしいもので、アトラクションとしてもおもしろいものなので、ぜひ見に来てください、ということだった)

所内のコースにはモトクロスの練習コースもあって、オートバイの技能教習が行われるそうである。この日も多数の方が研修を受けていた。いまのところ研修の対象は交通に関わる各種の「資格」の認定であるが、県内の高校生を対象にした安全教育が県の補助事業として委託されているとのことだった。また、自動車学校の教官や消防・警察など特別なドライバーも研修の対象となっている。たしかに交通の安全には道路の改善、自動車そのものの改良が欠かせないが、安全教育や安全技能の向上が不可欠であるから、初等・中等教育のなかにこのような教育カリキュラムを組み込むことは非常に重要だと思う。(付属の交通公園ではこどもが遊びながら交通マナーを身につけることができるように工夫されている施設も用意されている。)

 

 あいにくの雨模様だったが、マイクロバスで所内を案内していただいた。名調子の案内、技官の佐藤さん。

心理学に関係しているのは安全への「理論研究」部門で、柏原教官に研究の一端をはなしていただいた。関係する設備にはコンピュータによる「運転適性検査機」、運転シミュレーター、危険度感受性測定シミュレーターがある。見学したのは「交通危険学シミュレータ」室と「運転シミュレータ」室であった。

菊池さんの会社はこのシミュレーターを開発していて、測定の用途や研究実施に合わせてシステム設計や改良を行っている。人間の知覚・行動機構は非常に精緻なものであり、まだまだ未知の部分も多いためにこのように「現場」でチューニングしていくことが不可欠なのである。逆にこのようなプロセスを経て人間の特徴が明らかになっていく。たとえば、シミュレータによる「酔い」はどうも垂直方向の線分成分(シミュレーション画面ではビルなど垂直方向にエッジを効かせたCG画像が多い)による一種の残効によるということがわかってきたそうである。

柏原教官は「危険度予測」の課題として移動体(このばあい自動車)の運動予測の問題にとりくんでおられた。ハイビジョンのCRTを用いたシミュレータをMP社と協同開発できるといううらやましい環境である。「安全」のなかには人間的条件がかなり関わるので、このような基礎的な研究が必要とされる。ここでの研究技法は実験心理学の手法そのものなのである。

運転シミュレータ室では学生二人が体験。3年生のT君は堅実な安全運転行動をとっていたが、Yさんは仮免中ということで高速道路では派手な事故となってしまった。このシミュレータは一昨年MP社を見学したときに見せてもらったものと同じ形式のものだった。現在ではシミュレータは「適性」判定というよりは、実際の運転状況ではどのような危険があるか、それに対してどのような行動をとりがちなのか、といったことを認識するために使われている。これは「昔」言われていた「事故頻発者」や「適性」というような概念が不適切なものとなってきている動向にそうものであると思う。

見学を終えるときに、ある方が、このような新しい施設(平成3年完成)は最初は「寄り合い所帯」でスタートしたのだが、今後は業務も軌道にのってきたので本格的に内部で後継者を養成しなければならない時期になってきている、と述べられていた。「理論部門」では実験心理学の知識や技能は大いに役立つものであるが、なによりも、「交通安全」への貢献を志す研究者が求められている。


 

臨光謝謝 このサイトの内容は私の個人的な意見や記録で、大学の公式見解ではありません。

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