ノートパソコン実験授業・日誌 ■ノートブック日誌インデックス


99/2/21(日)電子出版(メモ)

まとまりがないが電子出版についてのメモ。

オーサリングツール等をつかえば電子出版により「本」を作ることができる。いまある本を単に「電子化した本」(以下電子本)にするだけでは、電子本の問題点が目立ってしまう。

しかし、電子本の利点として、これまでにはない特徴がある。

電子本はインターネット環境での親和性が重要だ。できるだけ読みやすくすることはもちろん重要だが、あまり本の体裁を実現する必要はないと思う。たとえば、「ふりがな」などは画面で印刷物のようにルビがふられる必要はないと思う。たぶん「読書」とはちょっと違うベンキョウのしかたになるので、それにあったスタイルを求めるということが大事なのではないか。

富田氏はインターネットを「思考の助け合い」が自発的に生じうる環境だと考えておられる。電子本が回覧され、追加や訂正などの書き込みが加わり、やがて「共同思考」の産物ができあがっていく。このような「共同思考」を助けるには、WWWサイトのファイルを読み、その場で「追加・訂正・注」(だれが、いつ追加したかも明記)できるようなブラウザーがあれば可能で、これは現在のWebサイトの機能で実現できる。始めてその知識にふれた人は「質問を」、くわしく知っている人は「回答」や「訂正」を、さらに新しく知識を得たり発見した人は「追加」をする、というような「読書」のスタイル。


富田倫生氏の「青空文庫」は本をインターネットの世界にのせて、テキストを自由に流通させる試みである。テキストデータの保存の問題は、現在はまだ未解決だ。そのため、いくつかの書式で保存されている。現状ではHTML形式で保存しておけば一番汎用性が高く、寿命が長いと思われる。

2月12日付けの東京新聞(夕刊)に富田氏の「青空文庫」(http://www.voyager.co.jp/aozora)の活動が取り上げられている(Media Watch欄:「静かに広がる電子図書館:”蔵書”すでに400点超える:著作権切れの作品をボランティアの手で」)。「青空文庫」は著作権のきれた文学作品などを電子本としてインターネットの世界に提供するボランティア活動である。記事によるとかなり大勢の方がこの活動に参加されているようだ。テキストデータは「音声変換」など利用の仕方もいろいろあるので、後で役立つことになる。このような活動を支えるには、やはりなんらかの経済的な支援が必要だが、その仕組みもまだ未完成だ。

富田氏らは主に文芸作品の分野で活動をされているが、初等・中等教育はもちろんのこと、大学程度までの教科書はなんとか「青空文庫」化できないものだろうか。著作権や出版の権利の問題でむつかしいことがあるのだろうが。文芸作品にはT-Timeは非常に適したブラウザーと思われるが、教科書や研究書にはどんなブラウザーが良いのだろうか。

「青空文庫」のページには「そらもよう」という日誌、またこれまでに直面した法律的問題などの情報もある。


99/2/20(土)PostPet2001/USB-10BaseT

ツレアイがPostPet2001をもらってきた。PostPetはプログラムCDが2枚入っているらしく、その1枚をもらってきたようだ。メールで連絡をとる場合に「ペットが配達」というオプションは相手もPostPetを持っていないとダメらしいので、プログラムCDを2枚同封して一枚をメール仲間にあげてください、ということらしい。早速インストールしてテストメールを出してみた。犬のペットを選択。たしかにわかりやすく、かわいらしくもあるが、飽きてくると面倒かもしれない。相手がポストペットを使っているかどうか、あらかじめ知る方法はあるのだろうか。たしかにメールを始めたばかりだとメールはそう多くは来ないのでこのようなゲーム的な楽しみがないと、メールを出したり、確認したりという習慣がつかないのかもしれない。私はやっぱり使わないと思う。

ノートパソコン用にUSB Network Adapter(USB-10BaseT)を近所のパソコンショップで購入(LINKSYS USB10T、9000円ほど)。ISDNルーターに接続するのにPCMCIAカードの10BaseTよりもカンタンそうなので試してみる。USBではケーブルの抜き差しにあまり注意しなくてもよいのでなかなか便利。

パソコンショップではあいかわらずiMacが売れている。アダプターの支払いを済ませている間にも、受け取りにきた客が数人。店員にちょっと聞いてみたら、5色セットでないと仕入れができないのでタンジェリン(オレンジ)以外の色は2-3週間まちになるとのこと。いっそのこと「着せ替えケース」でも販売したらよろしい。ボンダイブルーのiMacは報道では継続して販売するといわれていたが、この店ではもう扱っていないとのことだ。(予約待ちの状況は店によっても違うのだろうが、これは店舗に対する「だきあわせ販売」になるのでは?消費者に対するだきあわせ販売は「違法」のはずだが、店舗(法人)だと問題ないのだろうか。)


99/2/19(金)「大学の授業実践サイバー研究会」申し込み

「大学の授業実践サイバー研究会」を提案されていた向後さん(「ちはるの多次元尺度構成法」)がメーリングリストを立ち上げられる。

Webの「サイバー研究会」での利用法について、「私自身はメーリングリストとWebページをどうやって有機的に結びつけられるかを考えていた。しかし、あまりアイデアは浮かばなかった。せいぜいメーリングリストの内容を順次Web化して公開していこうかという程度」と述べておられる。

インターネットは「公開の研究会」にどのように使えるか。数名程度の共同研究で利用する場合にはメールですむことが多いと思われる。今度のような公開の「研究会」ではメールやメーリングリストではたしかに物足りない感じがする。新しいアイデアが生まれるかもしれない。

ホームページはどうしても一方通行的である。このためか、多くのページが「掲示板」をつくって「双方向の」コミュニケーションを図っておられる方が多いようだ。あるテーマの情報に接していたいという場合には旧来の「パソコン通信」形式の方がぴったりくる感じがする。メーリングリストの内容を掲示する場所があれば内容を一覧できて便利だ。これに「掲示板」をもうけておけば、だれでも書き込みできるので、より広い範囲の参加が見込める。この書き込みもメーリングリストで配信されるようになっていれば良いのではないかと思う。

「そこで話をしていれば、ひょんなところからいいアイデアも出てくるのではないかと思う」。同感。さっそく、「研究生」の申し込みをする。


午後から雪模様だったが、夜にはあがる。
99/2/18(木)Mac Expo・米国大学生のインターネット利用状況

今日から幕張メッセでMac Expo 。T-Timeのオーサリングキットが発売されるようだ(3万円くらい)。また、RealBasicの日本語版も発表の模様。昼頃からWebサイトで情報をみているのだが(10時30分開場)11時30分あたりからZDnet newsが更新され始めている。うわさのコンシューマーポータブルは発表されたのだろうか。MacExpoはここ数年いってない。今年は参加者も戻っているだろう。(夜zdnetやnikkei macのサイトでみたところ、新しい発表はアップル社の直販システムの日本での開始とサーバーソフトのアナウンス。直販システム開始で流通上のトラブルにならなければよいが。)

iMacから、従来のインタフェース(シリアル、SCSI、ADBなど)を廃止してきているのでユーザーとしは手を出しにくい状態が続いている。あのキュートなデザインをみるたびにこのことを思い出してしまう。「忠実な」ユーザーなら必要なインターフェースや周辺装置くらいすぐ買い直して、新しいマックどおですか?というところなのだろう。マックプラットフォームに新規の需要と新規参入の機会をもたらしていることも事実だが、ちょっと複雑な気持ち。iMac関係の本など見ると、最初のiMacの基板には「旧」インターフェースのパターンがちゃんとあるようだ。うーむ。コネクターくらいケチらず、スペースだけでも残っていればなあ。


zdnetニュースでは米国大学生のインターネット利用状況の調査の記事(http://www.zdnet.co.jp/news/9902/18/colledge.html

日本での調査は知らないが、いまのところは個人差・大学間の差が大きいと思われる。


99/2/17(水)電子出版のツール(続)

PC Wave 2月号でExpanded Book Tool Kit IIが4000円で「ワゴンセール」されていたという記事を思いだした(秋葉原”巡回”レポート。、、、オーサリングツールの曲がり角)。記事ではオーサリングツールはどれも元気なく、一般向けに販売されているのはハイパーカードとこのツールキットのみという状況のようだ。この背景には、インターネットによる「ストリーム」が情報伝達の主役になってきたことにより、記録メディア(CD-ROMやフロッピーなど)で配布することを前提としている従来のツールは「配布メディアを必要とするコンテンツが時代おくれとなった」と指摘されている。

本屋を覗いた。富田倫生氏の「インターネット快適読書術」ひつじ書房1998を買う。この本にはエキスパンドブックが姿をかえたT-TimeというソフトのCD-ROMがついている。T-Timeは、インターネット環境に合うようにWebページを本のように読みやすくする「テキストビューアー」である。テキスト形式のファイルやHTMLファイル、メールのファイル等をよみやくすく版組するものである。テキストビューアーとしては優れたツールのようだ(フォントのアンチエイリアス処理や日本語の漢字表記に独特のふりがななど)。まだ全部読んでいないが、前半はT-Timeのマニュアル的な内容、第5章のT-Time試論が「本の未来」の考察で面白い。

独自形式のタグを拡張するオーサリングツールにもなるようだ(Tools Enablerが個人に対しても低料金でライセンスされるとのことだ)。しかし、「出版」するとなると、独自形式のファイルにせざるを得ないという面もあり、インターネット環境でのスタンダードとの競合もあるのだろう。(専用のビューアーを無料配布しているようであるが、この方面ではPDFが先行していて標準的なのだろうか。PDFのオーサリングツールとしての「性能」は調べていないが、エキスパンドブックのような個人向けのものだとよいのだが。)

「人々の思いや表現は電子の流れにのって一瞬に地球を駆けめぐる。そうなってなお、考えをおさめる器が紙の冊子であり続けるとは、私には思えない」という富田氏の(「本の未来」、アスキー、1977)詩的な直観に共感する。出版を巡るきびしい現実を思い、また富田氏がインターネット環境の特徴だと指摘されている「思考の助け合い」を可能とするような、新しいオーサリングツールが欲しい。シロート考えでは、T-TimeがWebブラウザーに変身するとおもしろいと思うのだが。

電子図書館の運動について、いくつか紹介されていた。これら以外にもこのような「運動」の先駆となったいくつかのサイト紹介されている。

オーサリングツールについてはこの本を含めてもう少し詳しく検討してみよう。旧式のメディア配布方式とはいえ、少部数のテキストなどにはやはり魅力があるのでエキスパンドブックツールキットIIは見かけたら購入しておくべきだろうか。著者の富田氏は私とほとんど同じ年齢で、パソコンについては同時代を経験しておられ、共感する点が多かった。いろいろまだまだ書きたいのだがまとまらないので、また、改めてということに。


99/2/16(火)卒論担当者の変更

昨日PゼミのBさんからメール。Pセンセイが転出されるので、来年度の卒論担当者の相談。22日(月)にPゼミ生を全員集め、準備室のT君を交えて相談することに。わたしもこちらの大学に移るときに前の大学で卒論の担当(といっても指導教授の「下請け」だったのであまり支障はなかったと思う)をしていて「指導」が途中になってしまったことがある。かれらは3年次の準備で卒論を進めて、中間報告のために一度わざわざそろって訪ねてきてくれたことがあった。いまならE-メールを使えば、一週間に一〜二回程度ゼミで相談するよりも行き届いた「指導」ができるかもしれない。実際のゼミでは早く始める学生がペースを作っていくのであるが、このやりとりを他のゼミ生が読めるようにしておけば、お互いの進行具合をみることもできるので、よい刺激になるかもしれない。また、メールであればいろいろ意見も述べやすいかもしれない。この「遠隔教育」については今年度は試みることができなかった。今年の卒論は4名なので環境が整えば「実験」してみたいテーマだ。

だんだん卒論ができあがっていく過程をみることは楽しいことだ。これまでの経験だと、テーマの選択段階が一番おもしろいのであるが、なぜそのようなテーマを選んだのか了解できない場合もある。また、ある程度相談していても途中でテーマをかなり異なる領域のものに変更する学生もある。これがある程度具体的に実験の計画など相談した後だとちょっとがっくりということもあった。実験を始めて、やりながら実験を考えていくスタイルにもっていけると学生も主体的にいろいろ考え工夫をするようだ。しかし、テーマ自体の選択に長期間かかるとこのような余裕がなくなる。

論文を実際に書き上げる段階になると、実験や調査を終了してから「ぶっつけ」でまとめるというパターンが多く、「仮」提出後に一度返却するが、大幅な訂正や変更は実質的に無理なことが多い。準備の良い学生だと下書き段階で添削を求めてくるので、多少修正や補足することができる。

米国の(理系実験系の)大学院での話らしいが、ある高名なセンセイの研究室では、「やってきて数週間以内に仕事をはじめない学生は、半年たっても仕事が始まらない」といわれているのだというエッセイを読んだことがある。これを学部の最初の卒論にあてはめることはできないが、1年間という時間制限を考慮しなければならないことはたしかだ。

卒論担当者がかわるのはやむおえないことでもある。できる限りスムーズに移行できるように相談しよう。


99/2/15(月)かんちがい留年を防ぐ

午前中、4年生のHくんからケイタイに電話。卒業単位の計算で旧「教養」科目の履修条件を一部満たさない取り方をしている、との電話。たしか、あの条件はカリキュラム変更の移行期による特例で消滅しているハズだが、教務課に問い合わせるように指示。電話でもいいか、と尋ねるので、ちょっとおどろいた。オイオイ自分の卒業のことだろう。

きわめて少数ではあるが、うっかりミスで卒業できない学生が毎年いる。単位数の勘違いにより定期試験や再試験を放棄してしまう以下のような例があった。

教務上は卒業見込みの判定をコンピュータで行っているのでこれらはチェックできるのだが、計算違いをしたり、合否の確認を怠ってはどうしようもない。まあ、とにかくこのようなうっかりミスのないように念入りに確認を。

数年前から「セメスター制」に移行して、通年(前期+後期)科目はほとんど半期に分割されたものだから設置科目数が見かけ上ほぼ倍増した。分割そのものは教科内容の整理や設置科目の適正化に役立った面もあることは確かなのだが。このため以前からあまり見やすい成績表ではなかったが、さらに読みにくいものになっている。いろいろな記号や略字が使われていてそれらの説明がわかりにくい。この成績表を見やすいものにすること。また、成績表とは別に、履修の指針となるような資料が出せると便利である。卒業条件に対して、未履修の科目が何であるのかがわかるような。

また、学生が学内外から端末を通じて手軽に履修・登録状況を確認できるようになれば、このようなミスはなくなるだろうし、教務関係の指導負担も大幅に減少される。学生サービスの方面も考慮してシステムの改訂を行うべきだろう。


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