ノートパソコン実験授業・日誌 ■ノートブック日誌インデックス


99/3/28(日)聴衆の立場からの感想

昨日の講演をプレゼンテーションとした見た感想。

Lセンセイはさかんに「時間がないのではしょります」、「わかりにくいと思いますが」を連発されていた。これは講演者の側からはあまり言わない方がよいと感ずる。また、ご自身の研究よりもLセンセイのセンセイの研究や影響を受けられたセンセイの研究の紹介にほとんどの時間を費やされた。このため、センセイ自身は何を伝えたかったのだろうか、という印象が残った。私のような浅学のものが聞くと「わかる人にだけわかってもらえればよい」という感じがしてしまうのだが、ある世代以上の方にとってはあまり違和感のない話し方なのかもしれない。長老格のセンセイは「含蓄のある、蘊蓄に富む」と評されていた。

資料の提示方法については、たぶんOHPのシートだとおもうのだが、隣にOHPプロジェクターがあるのにどういうわけか液晶(?)プロジェクターの方で提示された。係りの人の手違いかもしれない。講演会場は比較的新しい教室(中教室)で設備も一応整っている。しかし、液晶プロジェクターは天井に作りつけられたりっぱなものなのだが(いまとなっては)旧式のため輝度不足。私は教室の中程の席だったが、図がよく見えなかった。教室自体の設計が悪く、細長い部屋の後ろのほうの席からはいずれにせよあまり良く見えないだろう。プレゼンテーション教室としてはやはり半円形型の階段教室が一番だと思う。この教室もたぶん建設当時は「最新鋭」の設備だったのだろうがこの方面の設備は陳腐化が著しい。

Sセンセイのプレゼンテーションは一部OHP資料の文字が小さくて読めないものがあったが、OHPのプロジェクターで提示されたので明瞭に見えた。Sセンセイの方が、聴衆に話しかけるという様子で聞きやすく、また、論点も明確であったと思う。しかし、講演会の常ではあるが、質問があっても「時間がおしておりますので」ということで討論打ち切りなった。これはやはり面白くないものだ。

講演の「内容」が一番タイセツであるのはいうまでもないことだが、聴衆の立場としてはやはりわかりやすくはなされる講演の方を歓迎したい。講演会なのだから話を聞くために開場に足を運んでいるのではあるが、それでも「聴衆というものは原則として話など聞きたくない」ものだということを前提として準備をすべきだと思う。

それにしても運良く私が「定年」の日を迎えて万一「最後の講義」をしなければならないような状況になったときに私はどうするだろうと、よけいな事を考えた。


99/3/27(土)記念講演会

午後から講演会。研究室を創設されたセンセイの名前を冠してY記念講座として運営されている同窓会主催の講演会である。今年は私が学部・大学院で指導を受けたセンセイが話をされるということで、「最後の講義」を聴きに久しぶりに母校を訪れた。実際は昨年度に退職されたのだが、この講演会は「学外」でご活躍の方を講師としてお願いすることを習慣としていたので、退職されて1年後にということになったようだ。LセンセイとSセンセイお二人というのも「異例」だった。Sセンセイには公私にわたりいろいろな思い出がある。Sセンセイはセンセイのやってこられたガクモン体系を展望され、今後の課題について話された。最後にYセンセイの「思い出」で話を終えられた。もうすこし時間に余裕がほしかった。

Yセンセイは大学院の授業のときにSセンセイに「自分のガクモンを押しつけることはしない。どのようなガクモンをやるのも自由だが、核になるものを身につけなければダメだよ」とお話になったそうだ。「そのためには「古典」をじっくりベンキョウすることが必要だ」ということだった(もちろん古典とはいっても文字通りの古典ではなく基礎になる学問という意味であると思う)。

Sセンセイのメッセージは「心理学のアイデンティティ」を忘れてはいけないということのように思った。これは私が学部のころに受けた講義や演習からうけたメッセージと同じものであった。


9/3/25(木)26(金)森嶋通夫氏「血にコクリコの花咲けば」

先日読んだ森嶋通夫氏の本(「智にはたらけば角が立つ:ある人生の記録」朝日新聞社)があまりにも面白かったので、その「前編」を昨晩より読書。「血にコクリコの花咲けば:ある人生の記録」朝日新聞社1997。著者の旧制高校から海軍、終戦までの記録である。コクリコというのはポピーのことでイギリスで戦没者を追悼するときに飾る習慣にちなんでいる。著者は海軍では「暗号通信士」であったということだ。私のなくなった父は士官ではなかったが陸軍の通信兵であった。もしかしたら類似の体験をしていたのだろうなーと重ね合わせて読む。

本のなかにはいろいろ意外なコトガラが書いてある。私には経済学のことは全然わからないが、たぶん森嶋先生はその方面では第一級の学者であろう。そのような方でも進路の選択についてはある種の偶然性か妥協の産物であったことを述べておられる。「妥協の結果として経済学部に進学する道を選んだ、、、。だから今までも何回か経済学から脱出することを試みた。脱出は今ですらときどき私を襲う想念である。」

「理論」と「実際」の問題については、「買い物も真剣にしたことのない人が、効用関数を極大にするという数学だけをたよりにして消費者理論を組み立てているから、経済学はいつまでたってもよくならないってこと」と奥さまにやりこめられたりしている。なんだか○○学にもあてはまりそうだ。

海軍での生活や戦局の変化する場面は不謹慎な表現だがドラマチックである。日本の明治いらいの「国体観念」が「個人のプリンシプルの尊厳と不可侵を」欠いているために、「日本においてイデオロギーの独走、、、凶暴化をもたらした」と結論づけている。現在でも同様の危険を孕んでいると言えるだろう。

うまく表現できないのだが、「智」(合理性)と「情」(イデオロギー的な)で「智」を優先させる著者は「情」を優先させようとする日本とは結局おりあいがつかないで、「智」をプリンシプルにしたコスモポリタンとしてイギリスに暮らすことになった。森嶋氏は純粋な「メイドインジャパンの学者」であることに誇りをもっておられ、最近では日本においてメイドインジャパンの学者やガクモンが「二流」のものとして認識されていることを危惧されている。


99/3/24(水)キイボード

WorkPad用のキイボードでGoType!というのがある (http://www.landware.com/)。 WorkPadに接続して一体型のハンドヘルドのようになる。しかし、これに付属するドライバーはWorkPad日本語版には完全に対応していなかった。国内ではVis-a-visというWeb商店が日本語版のドライバーを開発している(http://direct.sgs.co.jp/visavis/)。これのベータ版を以前ダウンロードしていたが、まちがえて Macでダウンロードしていて、そのうちにWindowsの方でとおもっていたら「製品版」が発売になった。

Macでダウンロードしたファイルはzip形式で圧縮されたものだ。ためしに、と思いこのファイルをウィンドウズに移動してみたらまったく問題なく「解凍」することができた。プラットフォーム間でのファイルの移動はけっこう面倒かと思っていたので意外にもあっけなくできてしまい拍子抜けした。キイボードは本当におもちゃみたいなものだが、意外と使いやすい。文字の切り替えもMacライクにコマンドキイとスペースキイでできる。これなら「製品版」を買っても良いかと思う。しかし、たしかに「日本語化」の労は必要だが、本来ドライバー込みで販売すべきだと思う。Vis-a-visで購入した人は無料でダウンロードできるようだが、別売だと3900円ほどでちょっと高め。(ベータ版の試用期限は4月5日まで)

富士通のWorkPad用片手入力キイボードも昨日はじめて見た。SH-keys。これは18個(6x3)のキイでできていて片手でタイプできるようになっている。ほとんどのキイにアルファベットが二つふりあてられていて(単独のキイもある)、ローマ字表記した場合の候補を辞書が判定して表示する。たとえば、GとTは同じキイに振り当ててある。これを(g/t)と書くことにすると、「たとえば」は、(g/t)( a )(g/t )(s/o )(e )(q/b )(a)と7個のキイをタイプする。このばあい、「たとえば」のほかに「がごえば」や「がとえば」が「同綴り異議語」になるがこれは辞書にはないので「たとえば」が入力される。

SH-keysは右手用、左手用が用意されていて、日本語入力用、英語入力用のドライバー(辞書)が用意されている。キイの数が少ないので習熟は早いと思われるし、面白い入力装置だと思う。たぶん今後はパソコン用にも販売されるようになるだろう。しかし、今は習慣になっているQWERTYキイボードと混乱しそうでちゅうちょしている。

WorkPadのオプション類はそれぞれあまり高額ではないために必要のないものまで買い込んでしまいそうだ。イケショップや本でみたものでは、コンパス(磁石、GPS方式ではないが簡易ナビゲータにもなる)、ボイスレコーダ(WorkPadで音声ファイルを管理)、携帯電話との接続アダプター、モデムなどいろいろ。オプションとして個人的に開発してほしいのはWorkPadに接続して使える小型のスキャナーだ。これで文献のタイトルやアブストラクトをメモできると便利便利だ。

(WorkPad関連のリンクは http://www.ibm.co.jp/pc/companion/workpad/link.html が面白い)


99/3/23(火)講師慰労会

今日は夕刻より研究室の非常勤講師の方をお招きして慰労の会。新宿にて会食。元気人間(元気というかハイパーという方が近いというカゲの声もある)のwセンセイはガクモンも娯楽も追求されるタイプの方でエライセンセイというのは興味も行動範囲も広いなーと思う。

慰労会までの時間、本屋と秋葉原に立ち寄った。本屋では森嶋通夫氏の「智にはたらけば角が立つ:ある人生の記録」朝日新聞社(1800円)。恥ずかしいことに、手の届かない世界の話のようにも感じてしまった。本物の学者というべきだろう。ガクモンの世界におりながら、このようなコスモポリタンな考え方をしていなかった自分のことを思う。「大学改革」についても別の場所で多くの発言をされているようだ。

秋葉原はイケショップで「WorkPadナビゲーションブック」(中井紀之・山田達司氏)日経BP社2800円。WorkPadは本来はMacOSの分身になるハズだったと思うが、マックとの接続ソフト(PalmDeskTopのマック版)の「公式な」日本語版の発売は未定の模様である(日本語化そのものはユーザーの手で開発中)。現在はWindows環境のほうで非常に便利に使えるのは皮肉なことではある。


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