ノートパソコン実験授業・日誌 ■ノートブック日誌インデックス


1998/10/11(日)「CAIの挫折」とコンピュータリテラシー

大学以外でのコンピュータを利用した教育の実態については知らないのであるが、CAI(Computer Assisted Instruction)が成功している、という話はあまり聞かない。かつてのLL教室と同じような末路をたどるのだろうか。PC WAVE(98/11月号)の有阪氏のコラム(なによりも求められるのは「コンピュータリテラシー」)によると、「CAIの挫折」には以下のような問題があるという。

というような問題があるということだが、学校には「ティーチングマシン」たる教師がいるので、これに取って代わるCAIの考え方はなじまないのかもしれない。しかし、独学の手段として「本」が重要な役割をはたしているように、CAIプログラムのすぐれたものは同様の機会を提供しうる可能性は非常に高いと感じている。むしろ、学校では、教える側の「援助」設備・環境としてコンピュータやインターネット情報を考えると良いのではないだろうか。

有阪氏によると、最近のコンピュータ利用の考え方は、(悪い意味での)CAI的な「成績向上」プログラムから「生徒の自発性や社会性、表現力を高めるためのコンピュータ利用」へと変化している、とのことである。特に公立の学校では2002年からインターネットを授業にとりいれるようにカリキュラムが変更になる予定になっている(ASAhiパソコン、98/10/15 No. 230、12-13、「すべての学校で教室からインターネット:文部省の青写真は実現するのか」)。文部省の関連サイトhttp://www.monbu.go.jp/singi/chosa/00000301/。

このような目標では、「コンピュータリテラシー」の教育が非常に重要になる、という有阪氏のコメントに同感である。有坂氏のコンピュータリテラシーの考え方は、一般的にいわれているものよりも、もっと基本的なことを主張されているようだ。これは単に「コンピュータを使って、ワードやエクセルやインターネットを利用できます」というような話ではなく、情報機器や莫大な情報にふりまわされることのない、必要な情報の取捨選択能力、インターネットによって接続された社会についての洞察のことを指している。大学ではこのような面の教育がぜひ必要だ。また、コンピュータリテラシーの教育を受ける機会を逸してしまった社会人へのコンピュータリテラシー教育も必要とされている(生涯学習のサービスの一環として実現できるだろう)。しかし、このような環境を形成しているハード・ソフトメーカーには、もう一段の技術革新(使いやすさ・標準化の点で)が必要で、現状のままでは、いかに教育を行っても「普及」には限界があるだろう。


1998/10/9(金)教室設備の確認

準備室のT君がきのうトラブルに遭遇した教室のチェックにいくというので、同行。RGB入力端子横のRCAピンプラグアダプターの切り替えスイッチの表示がないことが、トラブルの原因の一つであった。コンソール右側のカセットデッキの音声出力の切り替えスイッチには「CD」というラベルがはりつけてあったのだが問題の端子からの切り替えスイッチにはなにも表示されていない。ラベルをはりつけるように依頼。ノートパソコンからの音声出力は明瞭で迫力ある音で再生することができた。

もうひとつスクリーンがあると便利だと、まえに書いたが、教室の後ろに立派なスクリーンが置いてあることに気がついた。次回はOHP用にこのスクリーンを使ってみよう。

今回のトラブルのまとめ


1998/10/8(木)出力トラブル。

ノートパソコンのデフォルト設定の確認。今日は支給されたFMVノートを初めてプレゼンテーションに使った、と言うより、使う予定であった。知覚心理学の授業は前日用意した自画自賛プレゼンテーションをゆうやく実行する予定だったのだが、パソコンからの映像・音声出力の接続でトラブルに遭遇。R004教室のコンソールのRGB入力端子の並びにある音声入力コネクター(ステレオなどにつかわれているフツーの端子)に接続したのだが、映像・音声がでてこない。かなりあせった。しかたないので、冷や汗をかきながらOHPのみで話した。このため、ちょっと焦ってしまい、内容的にだいぶハショッテしまった。説明不足でわかりにくかったことと思う。

授業後、心理準備室のT君、教務課Mさんなどに聞いたところ、どうも、音量は接続側で調節するとのことなので、FMVの出力設定に問題があったのかもしれない。なお、FMVでは、本体液晶表示がデフォルト設定(初期設定)となっているので、あらかじめこれを液晶・外部ディスプレイ同時出力になるように設定しておかなければならなかった。なお、設定は、W98起動前に設定バイオスにはいって設定する必要がある(他の方法もあるのかもしれない)。音声出力はコントロールパネルで設定できる。さらにFMVの場合にはヘッドホーン出力の調節用にボリュームがつけられていて、2重にコントロールされていた(IBM TPは設定済みであったが、FMVも同じだろうと考えたのがちょっと甘かった)。

授業後、M教授にあったので、トラブル遭遇の話をしたら、「パソコンはトラブルのあるものということを認識できる、よい(?)反面教師」(なんのこっちゃ)になったのではないかとのコメント。いろいろなものを使うとその分トラブルの可能性も高くなる。M教授は「心臓によくない」といっておられた。さてバックアップ体制についても考えておかなければ。秋セメ終了時に授業アンケートをとってみるつもりだが、コンピュータをつかったこととか、トラブルばかりが記憶に残る授業になるオソレもあるぞ。なんだか「人柱」になったような心境だ。実験授業されている他のお三人の方の様子はどうだろうか?

ゼミ3年生よりテストメール。さっそく学外の友人などと連絡に使っている様子。就職部へ提出する登録用紙にもメールアドレスを記入することができてよかったとも書いてあった。(就職部や大学は学生メールアドレスの問題をなぜ解決しないのだろう。)

本日より、ホームページの最初のページに「来訪者」カウンターを設定した。いったいどの程度のアクセスがあるのだろうか?(電算室のNさん。ご教示感謝しています。)

ゼミで、さきほどのプレゼンテーションを見せて感想を聞いた。新しいものなので興味を惹かれた様子はあったが、一名は無言であった。全体には、反応は良く、内容についていろいろ質問がでた。

大学の帰り、8日発売でパソコン雑誌のなかでいちばん待ち遠しい「PC Wave」を買い、車中読みながら帰宅。この中にある連載コラムに「挫折したCAI」という今日の私の授業のようなエッセーがあった。このコラムについては週末にもう一度読み直して、考えてみよう。

PC Waveも「ついに」発行・発売とも電波新聞社からラッセル社に移るとの社告があった。これは、よくないニュースの前触れだろうか。PC Waveの目利きの編集人やライターははやくも次の新しいトレンドを発見したのかもしれない。ちょっと心配だが、楽しみでもある。しかし、私がおもしろいと思う雑誌は結構苦況にたたされているようである。例外は「噂の真相」くらいのものだろう。

Web日記を人はなぜ書くか(そのうえ、なぜそれを公開するのか)、という「ありふれた話題」があるのだそうだ。この日誌の場合は、実験授業終了時にはレポートを書かされそうであるから、そのための記録をのこしておかなければならないので、個人の記録のためという目的がある。また、公開の目的は、私の経験を公開することで、「協同思考」が促進されるのではないかということを期待しているからである。

「ことば」は個人のものである前にコミュニティで共有されるものであるから「書く」ことにより(それがまったくの個人の日記であっても、後で「別の」私が読むことで「協同思考」をしていると思うし、公開することにより多くの「私」が読むことにより「協同思考」が促進されるのではないかと思う。また、記録を残して書く場合にも「公開」しているのだという意識が、わかりやすく書こうとか、無理なロジックは無いかとか、自分の意見を明白にしようといった、社会的コントロールの役割を果たしているようにも思う。


1998/10/7(水)音声ファイルをつくる。教員側のパソコン利用・教材準備室の機材・教材の著作権。

聴覚関係の音刺激(デモテープ)から音声ファイルを作成。Q棟1階の教材作成室に行ったが、カセットデッキは使用できるようにセットされていなかった。係りに頼んで一台かり出し、教材作成室にノートパソコンをもちこみ、デジタイズ作業。このカセットデッキはかなり正確なカウンターがついていたので、作業は比較的楽だった。それでも1時間30分程度かかった。デモテープはちょっと前のもので、テキストとは別に販売されたものである。CD-ROM版になっていれば、検索、提示に非常に便利になると思う。今回は教材ということで使用するのだが、それでも「著作権」問題はあるので、教材としてどの程度利用して良いものなのかちょっと心配。

Windows98標準の「サウンドレコーダ」を利用。モノラルで、ごく単純な編集機能しか持たないが、単純で便利。しかし、作業の途中で一度、「処理を最適化するために云々」というアラートがでて、「ガーベッジコレクション」?がはじまったのにはちょっと驚いた。どのような制限事項があるのか、いつ、どのような条件で発生するのかがわからないので、ブラックボックス的不気味さがどうしても残る。パソコンソフトのこのような「仕様」の情報がきちんと得られればよいのだが。

プレゼンテーション資料作成用のソフトでは、スライド画面にスピーカのアイコンで音声ファイルを張り付けることができるので、視覚的にもわかりやすく、教室で「テープの頭出し」作業をする必要がなく、「スマート」に音声刺激を提示できそうだ。はじめてにしては良いできであると自画自賛。できあがったファイルをPowerPointのスライドにはりつける作業を、教員談話室で行っていたら、B教授、M教授、国際のK教授がいれかわり覗いていく。M教授も一応これはワードやエクセルをつかうといったパソコン利用のモンキリがたでなく、「新しそうな」試みだ、とほめてくれた。しばらく数人で実験授業やパソコン談義をした。教材は、パソコンのおかげでたしかに楽に作ることができるようになった。教員個人で初歩的なものではあるが簡単に「マルチメディア」教材を作成できるようになった、という点が、教員側でのパソコン利用の「進歩」と思う。しかし、これもコリはじめるとちょっとキリのないもになりそうな感じもる、という点で一致した。教員各自のできる範囲で作成したコンテンツの「自信作」は公開し、学内外の「同業者」と共同作業するのがよいのではないかと思う。

教材準備室はいろいろ機材はそろっているが、パソコンで授業をやる準備がやりやすいように、もう一度機材や配置・使い方の表示を考える必要がありそうだ。

国際部K教授は、パソコンに非常に関心がある様子なのだが、いまいち購入にふみきれないようであった。かれのゼミの学生はかなりパソコンに習熟しており、パソコンの技能に関しては「逆転」現象がある、といっておられた。一同、まわりにそのような学生がいるのであればすぐに購入すれば、と勧める。実はK教授は数年来「今度のボーナスで買おうかな」と言っておられたが、購入に至らない理由は、キイボードへの慣れ、機種選択についてつぎつぎ新製品がでるために「確信」がもてない、ということにあるようだ。また、逆に高度な計算能力を必要としているM教授は、ご自身の研究にはパソコンレベルの機械ではパワー不足だが、教育の問題を考えるとパソコンを採用せざるおえない、というジレンマ状態である。

ちょうど理数系から文科系までそろったので、カオスから複雑系まで、「高度な」会話を楽しんだ。(わたしには全然わからないのだが、基礎的な物理学の理論と多変量解析や経済学の理論の道具立てなど非常に似ているのだそうだ。)


1998/10/4(火)連続ものの資料作成・かみしばい

心理学研究で、検定についての授業用のプレゼンテーションを用意したが、統計的な内容で、学生に予備知識が少ないようなので、テーマから「行きつ、戻りつ」しなければならなかった。また、図表類を頻繁に参照しなければならないので、OHPを併用しなければならない。OHPでは直接こまかい点を書き込みながら説明できるためである。PowerPointの「ペン」オプションはマーキングには便利だが、式や絵などを書くことはちょっと無理。R003教室はスクリーンが正面に一つで、スクリーンをおろすと黒板を覆うようになっているために、プロジェクターを使っているときは、黒板、OHPが使えないのは不便であった。OHP用にスクリーンをもう一つ準備できれば便利と思う。

教室設備について、使用者のフィードバック。

なお、今日の授業内容「統計的仮説の検定」では、シリアルに授業が進行しないために、時系列的に準備されるプレゼンテーションではちょっと不便な点もある。この「検定」の話は3〜4回続くので、一回で終了しない話題についての資料については工夫が必要である。この点で今日のプレゼン用資料はあまり良い出来とはいえなかった(_0_)(多くの予備知識を必要とする話題の場合、そちらに目を奪われて目的地を見失いがちである)。ふと、子供の頃みた「紙しばい」がプレゼンテーションの本質に思えてきた。うまい絵ではないが、おもしろいストーリーと、人の声・動作、今度はどうなるのだろうかという期待を与える話の切り方。


1998/10/5(月)心理学実験(旧心理学実験実習1)のグループ別実験開始。実験は「閾値」の測定に関するテーマで。今年度新しくはいったタキスト・スコープ(AVタキスト)を使用。Windowsで動くソフトによって外部にSCSI接続されたコントローラーと外部モニターを制御して、カラー(256色、512*512)画面や文字を10ミリ秒単位で提示可能。刺激部分を提示するのに10ミリ秒が保証されている。なにぶん心理学実験の機材としては高価なため、現在は装置1台で、2〜3名ずつ交代で実験をおこなう。いまのところ、このような時間的にある程度厳密な実験はデスクトップでも、ノートブックでも、手軽にというわけにはいかない。このような実験がパソコン単独でできるようになれば非常にいいのだが。心理学実験に関しては、従来よりパソコンを使ってきているので、授業でのコンピュータ利用という点では目新しいもではない。

続いて、基礎心理学実験(旧心理学実験実習2)では、やはり、パソコンを利用した視知覚の実験が秋セメのテーマである。こちらは、ふつうのデスクトップがあれば、(ディスプレイの特性が問題になるが)いつでも実施できる。現在はWindows95の3台(ディスプレイの特性が同じ機種)を利用できるが、実験グループは6名なので、やはり待ち時間が生じてしまう。今日の実習では結局1時間の待ち時間が生じてしまった。時間制御にそれほど厳密でなくともよい実験やディスプレイ特性をあまり考慮しなくてもよい実験ではパソコンやノートパソコンを利用することによりに手軽に心理学実験を実習することができる。結果の整理(統計計算・図表の作成)もパソコンソフトでできるし、レポートの作成まで行えるので、実習課題の学習には非常によい環境となる。

実験実習の実験プログラムは、私の担当分では次のようなプログラムを作って使用している。(Windows95/98,Delphi3.1)


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