空想科学 

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2001/09/18(火)見学合宿(9/13)東京都福祉機器総合センター

午前中、S化粧品研究所の見学を終えて飯田橋へ移動。約束した時間まで昼食をとり、短い自由時間。予定時間の少し前にセントラルプラザ12階にあるセンター受付へ。団体見学をお願いしていたので、センターのKさんが対応してくださる。まずセンターの紹介ビデオで概要の説明を受けた。Kさんは理学療法関係の出身ということだった。「ご希望の心理学との広い意味での関わりについてうまく紹介できるかどうかわかりませんが」、と言われたが、所内の展示を詳しく説明していただいた。実験心理学と感覚知覚の障害援助の関わりについては、福祉機器の開発や適用援助という点で密接に関わっている。このことは「現場」の方にはあまり知られていないのかもしれない。

もうずいぶん前にになるが、実はこのセンターが開設された頃に一度見学に来たことがある。その頃は、これからいよいよ高齢化社会が来るぞ、ということが話題になり始めた頃だった。当時のいわゆる福祉機器の印象は、非常におおざっぱに言うと、日本製は非常にハイテクだが素人目にもたぶんあまり実用的ではないだろう、というものだった。一方、欧米とくに北欧製品はローテクだが見るからに暖かみを感ずるものだった。

今回あらためて見学に訪れたのだが、(記憶があいまいだが)以前よりも展示フロアーが拡大されていたと思う。多くの人がセンターを訪れていてかなりの「活況」を呈していた。介護関係のビデオや文献もそろえてあり、介護技術のビデを熱心にメモをとりながら見ておられる人もおられた。

「大物」「ハイテク」器機も多く展示されていたが、市場での評価を受けつつあるせいか、必要性や実用性を感ずるものが多くなったような印象を受けた。とくに身の回りの物やすぐに役立つ用品、工夫された物など豊富になっていた。同じ目的の援助器機にも非常に他種類あって、選択できるようになってきている。いわゆるユニバーサルデザインの流れで、大企業もこのような商品市場に参入してきている。これらはいっぱんの人にも使いやすいように見える。その一方で種類が増えたために適切な器機を選ぶのが難しくなってきている面もあり、適切な助言も必要になってきている。

また、実用品ばかりでなく楽器やゲームといった楽しみの為の道具も展示されていたのが印象的だった。情報機器についてもいろいろな展示があった。こちらはまだまだこれからといった印象だったが、いろいろな情報を知り・表現の手段を確保するために非常に重要な分野である。 これはWindows画面の一部を拡大するプログラム。そのまえにWindows自体をなんとかして、といいたくなるが、ともかく使える状態にすることも必要。

センターの役割は、介護の相談(方法や技術などのほか行政的な相談など)が主要なものである。非常に便利だが、あまり知られていない、というような用品が多くある。介護・援助用品が多岐にわたるために、適切なアドバイスが必要になってきている。このように福祉機器についてのアドバイザーが必要になってきていて、その養成講座も開設されている(福祉用具専門相談員講習会。特に資格は必要ないようなので、関心のある人は http://www.kiki.metro.tokyo.jp/index.shtml を見てください)

もちろん福祉全体のなかでは、感覚・知覚障害援助単独の問題ではないのだが、加齢にともなう感覚・知覚障害についてもいろいろな援助器機が展示されていた。

たとえば、加齢に伴う聴覚と視覚の変化をシミュレートするデモンストレーションプログラムが作られていた。また、眼には白内障を疑似体験するフィルターをつけ、耳栓をして、手足に重りをつけて加齢を疑似体験する「高齢者疑似体験」も行われている。今回は残念ながら人数が限られていて予約がとれなかったのであるが、当日は都内の役所の方が研修を受けておられた。

 これは加齢にともなう聴覚・視覚の変化を疑似体験する装置。どんな風に聞こえたり・見えたりしているのかをシミュレートする。

見学も予定時間を終了した。また、大企業がこの領域に進出してくることで大きなメリットもあるのだが、一方で、不要な機能の競争になったりするのではないか、と危惧されてもいる。私は以前に訪れた時の印象と今日あらためて受けた印象の違いを述べた。学生諸君からもいくつか質問が出ていた。最期に、説明していただいたKさんは「勉強だけでなく、やはりボランティアなどをやって実際の体験をすることが大事なのではないでしょうか」と述べられた。

見学合宿の日程もこれですべて終了した。セントラルプラザのファーストフード店で精算などすませ、上野駅に向かい、昨日集合した公園口で解散した。


2001/09/17(月)見学合宿(9/13)S化粧品・研究所

青少年総合センターであわたたしく朝食をすませチェックアウト。トレイをもって好きなものを選択していく形式になっている。ここでもいろいろな国の若者の様子を見ることができる。東洋系のグループは概してまとまて食事をとっている。欧米系?はせいぜい数名ずつ。(まったくあてにならない観察。宿泊人数の割合のせいだろう)

学生の泊まった宿泊棟はシーツを返却して、部屋の状態を確認して簡単なチェックリスト票を提出しなければならない。ところがこのシートをシーツ返却の係りが(誤って)受け取ってしまい、チェックアウトの時にカウンターで要求されて、ちょっと困ってしまった。また受け取りに行かなければならないのか、と思ったが、カウンターの係りの人が事務的な対応をしてくれたので(今回は融通の利く)短時間のロスで済んだ。具体的に書くとちょっと問題かもしれないので書かないが、これで済むのであればいっそのことあれは不要なのでは?といった処理であった。

ここで気づいたことは、ゼミの学生諸君は普段ほとんど「朝ご飯」を食べない、らしい。予約不要だったかなあ。チェックリストのトラブルで一足早く学生を出発させ、途中で追いつく。なぜかコンビニへ行きたいということで5分間の自由時間。新宿経由でs化粧品の最寄り駅に到着。しかし、道を一本間違えてやや遠回りし、交番で道を聞きなんとか5分おくれくらいで到着した。

今年は旧知のIさんが出張中ということで、Oさんが対応してくださった。Oさんは美容師の資格をもっておられるそうだ。会議室に案内してもらい、会社の紹介ビデオを見る。こちらも映像・構成の洗練されたビデオである。お目当ての心理学に関係する部門・研究テーマとしては「官能評価」「化粧の心理的有用性研究」「認知科学的研究」「生活者の意識・行動研究」「色彩研究」という分野が紹介されていた。そのほか文化人類学的な研究(化粧文化研究、ファッション)なども行われているようで、伝統的な文学部の構成に近い内容で、「化粧」に特化した体型である。このような独立した「文系」の研究所を持っているのはおそらくS化粧品のみであろう。ちなみに、研究対象として最近は「消費者」でなく「生活者」ということばをつかうようになっているということである。

ビデオのあと、所内のツアー見学。各フロアーを見学してまわる。ここには「研究系」ばかりでなく芸術系のスタジオもスペースを占めている。これらのセクションはデザイナーのデッサンや作品が飾られていて、華やかな雰囲気である。

所内見学のあと、(K学院大学の大学院(心理学専攻)出身の)Hさんに心理学に関係する分野の研究の紹介の話をうかがう。Hさんはストレス関係の研究をされている。一昨年の見学の時には、まだデータが不安定であったように記憶しているが、今回はかなり安定している様子であった(この理由については質問しそこなったのであるが)。

次に「哲学」の出身と紹介されたKさんに化粧の歴史的・文化的な話を短時間だが紹介していただいた。

心理学の役割としては「製品開発のサポート」「官能評価」「心理効果」など多岐にわたる。いみじくもこの研究所では実験心理学の分野に関係するテーマを「ヒューマンサイエンス研究」という言葉でまとめて呼んでいる。また、調査の分野では「生活者研究」、さらに文化人類学的な研究は「生活文化研究」として「化粧」や「美」というテーマで学際的・総合的な体系となっている。このように人文系のかなり広い範囲にわたる研究をカバーしようとしている。このような研究所の「有効性」が示されれば、他のメーカーにも波及するのではないか、とひそかに期待もしたい。

「生活者」の研究は結局マーケットや消費者の嗜好・消費を根っこの部分から分析して理解しようとするものであろうが、従来の手法ではいろいろな意味でスピードに追いつけなくなっているのではないだろうか。大企業の悩みをかいま見たようにも思う。(ここらあたりの問題は狙い目だとおもうぞ。なんの?)


2001/09/15(土)見学合宿(9/12)宿舎

今年の宿舎は新宿にほど近い「国立オリンピック記念青少年総合センター」(最寄り駅は小田急線・参宮橋)である。見学合宿はどうしても都内近郊がその対象になるために、宿舎には苦労している。学生諸君の「心理的財布」で一泊あたりの費用がどのあたりがリーズナブルであると評価しているのかよく分からないのであるが。ともかくなるべく安価に、しかも、できれば快適に、ということで、見学先の一つが八王子に近かったこともあって、これまでは八王子にある大学セミナーハウスをビジネスホテルと組み合わせて利用していた。

なんでいままで気がつかなかったのかとも思うが、青少年総合センターは便利な場所にあるし、施設も立派なもので、しかも非常に安価である。ちなみに今回参加したのは学生8名だったが、4ベッドの部屋二室に別れて、一人一泊1150円。4ベッドというとせまそうだが、スペースには余裕があるように見えた。ただし、シーツなどは自分で取り替え、バス・トイレは共用。私の部屋はシングル(ビジネスホテルのシングルルームとほぼ同じ)でなんと2150円だった。利用はいちおう届け出「団体」に限られるようで、最初にこの届け出手続きが必要である。利用手続きや「窓口」の対応がいかにも事務的な点をのぞけば合宿や研修には最適であると思う。

宿舎内の雰囲気は若い人のグループが多いせいで、明るく活気がある。所内には会議室のほかプールなど各種の運動施設もある。

食事はカフェテリア形式の大食堂(「ふじ」)とレストラン「さくら」がある。申し込みのときには大食堂しかないのかと思って、こちらを予約したのだが、レストランの方は特に予約は必要なかった。値段は大食堂の方は安くて、朝食、昼食、夕食、でそれぞれ490円、590円、690円である。レストランの方はもう少し高いが、夕食でも1600円程度。

食事は街にでて、と予定していたのだが、到着してチェックインをすませたのが午後8時をまわってしまったので、レストラン「さくら」でとることにした。建物の最上階にあるここからは代々木の杜のむこうに東京の夜景がきれいに見える。

レストランのウエイターの方が、われわれの大学の(別の学部の)Y先生がよく利用されているんですよ、と話してくれた。部屋にもどってテレビニュースを見る。いつまでも際限なく見続けることになりそうだったが、翌日の見学を考えて一時過ぎに就寝。学生諸君の方はかなりおそくまで起きて話していたらしい。


2001/09/14(金)見学合宿初日(9/12)

午前中に上野駅公園口に集合。東京駅へ移動し、東海道線の特別快速アクティで平塚へ出発。プラットホームでお弁当を買ったりして、ちょっとした旅行気分。アクティはすべての編成が2階建て車両で、全車両禁煙というところがすばらしい。やや天井が低いものの座席などは快適だった。小一時間で平塚に到着。暑い。バスでS香料の研究所へ。所内の工事中とのことで、普段は通らない倉庫や資材置き場を通って研究室へ。材料のドラム缶などが保管してある。すでに香料のにおいがしていた。

さっそくNさんと挨拶や紹介をすませて、見学開始。始めにS香料の会社の事業内容紹介のビデオを見る。まだそれほど多く訪問しているわけではないが、企業ではこのようなビデオをつくっているところが多いようだ。二日目のs化粧品でもそうだったが、「官能評価部門」というのがメーカ関係では心理学に関係のある部門である。

官能評価は知覚心理学や心理物理測定法の応用分野として講義や実習でも取り上げている。この用語は定期試験に出すと、迷解答がでてくるので、出席チェックに使えるため、ときどき出題している(新案登録済み)。実際、官能評価学会でも名称の変更が話題になったことがあるそうだが、すでに定着しつつある、ということでこの名称を使うことになった経過があったそうである。

このビデオと香りと官能評価(Nさんの仕事の内容)についての概略をレクチャーしてもらい、このあと、所内を見学して回る。私にとっては2度目なのだが、官能評価のための設備(小ブースや味覚調査のための設備など)を見せてもらう。完成品の状態でのテストも行われるために浴室の設備やドレッサーなどが設備されたブースもある。昨年みかけた簡易サウナは今年はかたづけられていたようだ。このあたりがNさんの主な仕事場でもある。また、香りと「ストレス」の話題はこの業界の最近のトレンドのようで、生理心理学関係の設備もあり、心理学出身の方が仕事を担当されている。

 ことしは特に官能検査・評価法を中心にして見学したい、というリクエストをしておいたので、Nさんは、「実習」を用意しておいてくださった。もっとも基本的な方法として、5種類の香水のサンプルについて、香りの印象の自由連想評価(あとのSD法の尺度の選択に利用)を行った。香水のサンプルを濾紙に一定量つけて、香りを嗅ぎ、その印象を自由に記述するという課題である。私もやったのだが、嗅覚の印象を言葉で表現するというのは意外に難しい。また、慣れていないのでついついクンクン嗅ぎすぎてかえってにおいをわからなくしてしまう。熟練したパネル(特定のトレーニングをつんだ被験者)ではさっと嗅いで、学習済みのにおいの種類や物質でかなり安定して評価できるようになるということだ。続いて、SD法によって各香水の印象を評価していく。このような手順で最初のレクチャで紹介された「香りの印象マップ」をつくっていく、というのが官能評価の典型的な方法の一つである。予定の時間が近づいてきたので、結果はあとでメールで、ということで、最後にまとめと質疑の時間。

 香りの評価をしているところ。香水試料を少量濾紙につけてにおいをかぐ。

Nさんもだいぶ仕事にも慣れてきた様子で、学生たちの「先輩」でもあり、いろいろ説明してくれた。学生もいろいろ質問していた。ある学生がにおいの合成や加算についてなかなかさえた質問をしていた。

官能検査の部門は最近はメーカでも特に注目されてきているようである。結局、製品をつかう人間の感性評価が大切だ、ということである。しかし、(嗅覚や味覚に関係するメーカを除くと)「感性」をどのようにとらえればよいのか、あるいはどのように評価・測定できるのか、というような研究分野が心理学の分野であることが知られていないようである。このあたりにひとつチャンス(なにの?)がありそうだと思うのである。

現在のところ香りの測定・評価は化学的な測定(ガスクロマトグラフ)法と官能評価が併用されている。測定器によって分析測定しても、そのデータから同じ臭いを再現できない場合も多いそうである。最後は人間の官能評価によって成分とその割合を詰めていくのである。しかし、測定器機の特性を人間と同等にできるようになっていくのかもしれない。そのためには、(まだ未知の部分が多いとされる)人間の特性を理解することが必要なのである。

4時間あまりにわたる見学も時間が終了時間がせまってきた。昨年と同じく研究所の玄関前で記念写真をとって研究室を去り、平塚駅へ。帰りも快速アクティで。時間まちの間、15分ほど自由時間。昨年は駅ビルの休業日だったせいか気づかなかったが、ここにもスターバックス。飲み物などを買って、一路新宿方面へ。


2001/09/13(木)合宿

昨日からの一泊二日の合宿から帰宅。今年は台風のため初日を中止したため、ややあわただしいものとなった。昨日は午前中に上野駅に集合して、平塚にあるT香料の中央研究所を見学した。宿舎は代々木の「オリンピック記念青少年総合センター」。今回はじめて利用したが、非常に立派な施設で、料金も安く、高校生の修学旅行?や大学間の交流など海外からきている若い人たちで活気があった。ただし、「国立」の施設のためか、対応は「事務的」だった。不愉快ではなかったが、閾値付近、というような。東京にはこのような安価な宿泊施設が少ないので貴重な施設だと思う。民営化された場合、この価格とサービスの水準を維持できるだろうか、とも思ったが、経営形態はどうであれ適正な価格でこのようなサービスを提供し続けてほしいものだと思う。

ロビーに大きなスクリーン・テレビがあって、おりからのテロ報道(CBS?英語放送)を米国人らしい若いグループが見入っていた。

二日目の今日は都内のS化粧品の研究所と飯田橋の東京都福祉機器サービスセンターを見学した。企業や社会における実験心理学とのかかわりを知り、また、新しいかかわりの可能性をもとめて見聞を広めるために、さまよってみよう、というのが見学のおもわくなのである。くわしい見学記はあらためて。

見学先の方々には今年も見学に際して忙しいところ時間を割いていただきまして、どうもありがとうございました。学生諸君においても得るところや良い「きっかけ」になったのではないかと。


2001/09/11(火)台風・戦慄

今日から合宿の予定だったが、集合時間をだいぶおくらせたのだが、動きの遅い台風15号のせいで初日は中止にして、明日あらためて集合ということに変更。一部の学生はすでに自宅を出たあとだったので気の毒だったが、やむを得ない。夕方になって柏付近は晴れ間も出てきたが、水戸方面はまだ雨風が残っているだろうし。

前の台風といい、こんなに動きのおそい台風はあまり経験がない。ニュースなどみていると、昨日の夕方くらいから「まもなく上陸の恐れ」の連呼でいいかげん苛立つなあ。台風らしくきちんと通過しなさいね、まったく。

まあ明日はたぶん台風一過でいい天気になるだろうから、気を取り直してしきり直し。

計画変更で所在なく部屋の片付けなどやっていたら、テレビニュースで米国のテロ事件を報道し始めた。ものすごいことになっている。いまの時点では「犯行声明」はでていないようだが、リアルタイムで放映されることを計画したかのような映像をただただ見いってしまった。これは大規模な報復が行われることになるだろうが、米国は、戦争ではない「裁き」ができるだろうか。

先日は大学のサーバーがつながらなかったようだ。筑波大でなにかトラブルがあったらしいと、情報センターからメール。合宿の連絡でメールをつかっていたのでヒヤヒヤ。やはり最終調整は携帯電話。


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