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【研究紹介】風刺画の「なぜ?」から社会を読む


COMMUNICATION STUDIES / RESEARCH NEWS

新聞・雑誌のイメージから、人びとの不安を考える

人間科学部コミュニケーション学科 深松亮太

一枚の風刺画には、その時代の「当たり前」や、人びとが抱いていた不安が、思いがけない形で描き込まれています。私は、アメリカの新聞や雑誌に掲載された風刺画や広告を手がかりに、人種やジェンダーをめぐる社会の変化が、どのようなイメージとして広がったのかを研究しています。

図1 人生の階段を上りながら過去を振り返る女性。階段には「愛」「結婚」「子ども」「家庭」「キャリア」「参政権」「不安」「孤独」などの言葉が並ぶ。
出典:Laura E. Foster, “Looking Backward,” Life, vol. 60, no. 1556 (August 22, 1912), p. 1638. Library of Congress, Prints and Photographs Division, LC-DIG-ppmsca-02940, LCCN 2002716765. LOC所蔵記録(2026年7月21日閲覧)。公開条件:No known restrictions on publication.

2025年に発表した論文では、20世紀初頭の女性参政権運動を取り上げました。当時の風刺画では、政治に参加する女性が乱暴で「女性らしくない」存在として描かれる一方、男性が家事や育児を担う姿によって、男女の立場が逆転した未来が面白おかしく表現されました。

続く2026年の論文では、1920~30年代のフラッパーやモダンガールなどの「新しい女性」に注目しました。働くことや自由に恋愛・結婚を選ぶことが、なぜ社会の秩序を揺るがす脅威として描かれたのかを、各国の風刺画を比較しながら考察しています。

2026年7月11日・12日に近畿大学で開催された日本国際文化学会第25回全国大会では、研究対象を第二次世界大戦後のアメリカへと広げ、「働く女性」をめぐる雑誌の風刺画について報告しました。妻が仕事へ出て夫が家に残る1943年の作品、職場で女性が交渉力を示す場面、さらに働く女性を性的な存在に置き換える1950年代の作品を比較しました。そこから、女性の就労が家庭内の役割を逆転させ、男性上司の権威を揺るがすという不安が、最後には女性を笑いや欲望の対象とすることで処理された過程を読み解きました。

今回紹介するのは、ローラ・フォスターが1912年に描いた「Looking Backward(顧みれば)」です。女性が「愛」「結婚」「子ども」「家庭」「キャリア」「芸術上の成功」などと記された階段を上り、その先にある「参政権」「闘争」「不安」「孤独」へと進みながら、過去を振り返っています。この絵は、権利や成功を求めた女性が家庭の幸福を失うという警告にも、女性が参政権を得るまでの道のりの長さに対する批判にも読めます。どちらか一つを正解と決めるのではなく、絵の細部を当時の言葉や出来事と照らし合わせて考える。そこに、風刺画を歴史資料として読む面白さがあります。

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