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法律行政学科ニュース

ホーム > 法律行政学科ニュース > 吉田ゼミの学生が、市長と議会との対立が続く広島県安芸高田市に訪問調査し、二元代表制の実態やあり方について意見交換をしました

吉田ゼミの学生が、市長と議会との対立が続く広島県安芸高田市に訪問調査し、二元代表制の実態やあり方について意見交換をしました


法律行政学科の吉田勉ゼミナールの学生14人が、8月30日~31日の2日間、広島県安芸高田市にゼミ合宿で訪問調査し、市長と議会議長などの皆さんと意見交換を行いました。

安芸高田市では、2年前に、参議院選挙違反事件に関与した市長の辞任を受け、当時37歳の都市銀行勤務の石丸伸二氏が当選・就任しました。石丸市長は、就任当初から、自治体の意思決定権限を有する議会とそれに基づき行政執行を行う市長はじめ執行部との関係、すなわち二元代表制に関して是々非々の議論によりそれぞれの機能を発揮した関係を築きたいと取り組んできました。

その取組みは、議会との極めて高い緊張関係をもたらすことになり、市長が公募で4000人のなかから選任した副市長候補者について、議会は否決するとともに副市長2人制を1人減少する条例を提案し可決させる一方で、市長は逆に議会の定員16人を半減する条例を提案し否決されるなど、通常の自治体では起こりえない事態が生じ極度の対立関係が続いていました。

マスコミ報道などで全国的にも注目される安芸高田市の市長と議会の関係について吉田ゼミでの学生同士の議論においては、二元代表制において市長と議会が対立することは地方自治制度の想定の範囲内であることは理解しつつも、「対立のための対立になっていないか」、「対立が続くことで市民サービスに問題が生じることはないのか」、「解決に向けての双方の考えはどのようなものか」などを直接双方からお聞きして、自分たちの疑問を提示して意見交換を深めたいと考えました。

安芸高田市・石丸市長

安芸高田市議会・宍戸議会議長等

そこで、夏期休暇中のゼミ合宿を活用して、ゼミ担当教員の吉田勉教授とともに実際に現地に出向き、市長と議長をはじめとした関係者のこの問題についての考え方、生の声をお聞きし、意見交換をすることを企画しました。お忙しい市長と議長、副議長の皆さんでしたが、学生の熱意を理解いただき、今回の面談が実現しました。

当日は、市長と議長を相手に(もちろん別々の時間帯・会議室で)学生が十分準備した質問により意見交換が繰り広げられました。

学生から市長へは、「議会への根回しは市民の代表としての議会を尊重し、円滑に政策を進めるうえで必要ではないか」、「職員の対議会の職務に支障は生じないのか」、「マスコミからこれだけ注目されることで議会に対する考え方は変わったのか」、「議会との対立解消に向けてのアイディアはあるのか」などの質問がなされました。

また、議長や副議長に対しては、「全国公募の副市長の選任同意に当たってはさらに慎重に議論すべきだったのではないか」、「市民への議会審議の公開を進めて市民が対立を理解するような取組みが必要ではないか」、「市長の言動に一定の理解を持つ若手議員も存在するようだが、議会議員相互に対市長へのスタンスを検討・議論するようなことはしているのか」などの質問がなされました。

相当に刺激的な質問でしたが、学生が勇気をもって発言しました。
これについての市長や議会の回答や意見交換の結果は、12月に予定されている「二元代表制を極めるシンポジウム」(仮称)で改めて報告することになりますが、学生の面談後の感想を集約すると、次のようなものでした。
  • 「市長の確固たる信念に基づく遠慮無しの対応は気持ちいいぐらい」
  • 「議長や副議長の対応は報道や動画だとどうかなと思っていたが、それには随分と裏事情があり、必ずしも批判すべきものばかりではなかったと感じた」
  • 「議会それぞれの議員には自分なりの考えがあり、本当の市のことを考え抜いているようだ」
  • 「二元代表制の対立は想定されたものであるが、相互に不信感が満載であり、信頼関係があったなかでの激論・対立が実現できればいいな」など

市長や議長からは、遠く離れた茨城県の常磐大学が、広島県安芸高田市の行政執行や二元代表制について関心を持ち、来庁してくれたことに深く感謝するとのお礼の言葉がありました。

学生達も、常日頃から勉強している自治体行政や自治制度のうち特に重要な二元代表制の運営や課題を今回の安芸高田市の事例に即しその当事者との意見交換をするといった極めて貴重な経験をすることで、今後の地方自治のあり方についてより深い理解を得ることができたようです。

石丸市長とゼミ生との意見交換の様子

意見交換会後に石丸市長(前列中央)を囲んでの記念撮影