大学往来 

■大学往来インデックス


2000/10/15(日)心理テスト

東京新聞に二つ心理テスト関連の記事があった。一つは、「EQ指数」(Emotional Quotient)テストが企業内での「人事考査」に使われているという記事。もう一つは心理テストそのものではないが、詐欺事件で公判中のある団体が発行していた「足裏占い」のゴーストライター氏の記事であった(メディア新事情、週刊誌を読む)。

記事によると、 EQという考え方は、米国の研究所で「成功した研究者とそうでない研究者」の条件を調べたものが元になっているようだ。一般論としては、ある目的のために作られた心理検査を標準化手続き以外の目的に使用する場合にはほとんど役にたたない、というのが常識であると思う。この種の調査の結果の解釈でよく忘れられるのが、「他の条件が一定ならば」という条件と、統計的な調査だという点である。

また、このような「偏差値」が現れるとそれが一つの規範基準となりそれに適合した行動形態がとられるようになる、という面も見られるようになるだろう。

EQ指数についてはイー・キュー・ジャパンという会社が診断テストを開発したということだ。どのような標準化手続きによっているのかを調べなければならないが、記事の中ではこの会社がビジネスとして実施してて、しかもかなり多くの企業や団体で「採用」されているとのことだ。

身近なところでは、いろいろな大学で就職課などが実施している「適性検査」の問題がある。誰が採点し、どのような「診断」をくだしているのだろうか。「正しく」運用されていることを、老婆心ながら。

もう一つの記事のほうは、「足裏占い」のゴーストライター氏の告白によると自分の足の裏を眺めて、それを理想的な「足の裏相」として創作したのだそうだ。そのことを知らない信者に自分の足の裏を見せたところ、「こんな理想的な足の裏の相をみたことがない」と「診断」されたそうだ。本人は「「動物占い」のようにお遊びで作った」と述べている。

一時期「血液型性格占い」を人事考査や入社試験に課した企業があったようだ。これらはおそらく企業を益することはなかったものと予想されるが、こういうことを始める人たちは心理学出身者なのだろうか。あるいは「血液型占い」・「動物占い」のようなもの、標準的な手続きによる心理テストもたいして区別されていない人たちによるものなのだろうか。

標準的な手続きを備えた心理テストは一見もっともらしいので、むしろやっかいなものかもしれない。

長野知事選はどうなるだろう。野次馬としては田中氏当選を期待しているのだが。


2000/10/13(金)哲学的人生

東京新聞(夕刊)のコラム「大波小波」は今日は依怙地氏の「偏屈者の道」というタイトルだった。このなかに(哲学者)中島義道氏の本がいくつか紹介されていた。「大学という世界にはびこる」生態をえがいた部分があるというので「人生を半分降りる」(新潮OH!文庫)を読み始めた。たんなる中年の堕落の書ではないと思うのだが、最後のページにこれは冗談でした、とか書いてあるのではないかなどと邪推する私にはまだ「哲学」を生きる準備さえできていない。

卒業生からメール。最近パソコンを買ってメールを使い始めたということだ。ときどき葉書で近況を知らせてくれていたひとだ。何人かの卒業生の消息も知る。


2000/10/12(木)バジル・ソース

午前中は知覚心理学。聴覚の3回目。きょうは聴覚やことばについての心理学的知識と密接な関係のある「言語聴覚士」についての新聞記事から話にはいった。「資格」は諸刃の刃であり、質を維持するという本来の面と同時に、仕事やその質を閉鎖的なものにしてしまう。実習などむずかしい面があることは確かだが、資格試験についてもう少しオープンなものにできないものかと思う。

聴覚では刺激特性の記述として、音のスペクトル表示がよくつかわれるので、音の周波数分析のごく概念的な説明をした。これは「本題」ではないのだが、どうしても知っている必要があるから。音声の分析とフォルマント構造の説明。次回は人工内耳装着時の心理学的諸問題について。

午後から卒論相談・ゼミ。ゼミは「課題研究テーマ」の一つとして、「意識」についての実験的研究として「閾下知覚」「プライミング効果」についての文献を紹介した。

学生はときどき心にぐさりとくることを意図せず話すことがある。

非常勤講師の P 先生から自家製バジルでつくられたバジルソース(ジェノバ風ソース)をいただいた。今年はベランダ菜園の種まきの時期を逸してしまった、という話をしていたら、P先生のジェノバ風ソースは評判がよくて、ことしはいつもの年の倍つくったので、ということで、わざわざ持ってきていただいたものだ。チーズもしっかりしたパルメザン・チーズをおろしたもので非常によい香りだ。


2000/10/11(水)「試み」

午後から院・行動適応学。この講義では大学院開設初期のころの受講者(主に医療関係従事者)との関係からはじまった「学際」領域を探索する「試み」をしている。「試み」ばかりでいいのか、という思いがないわけではない。今日は開眼手術後の視覚の形成過程についての心理学的な研究の紹介。内部進学者には学部授業の内容と重なるが、初めて聞く院生もあるので(の、ほうがむしろ多い)。このような本来の意味での臨床的な研究は医療にかかわることのできる「資格」をもつ人々には有益であるように感ずる。またいつも思うことながら、このような知識をいかすことができるはずなのだが、心理学出身者には「資格」の面で制約があることを残念にも思う。

つづいて委員会。予想より早く終了。今年度新しくはいったDell Dimension L566とXTP 650のネットワーク設定をした。プリンターの共有設定と共通ファイルの設定。ほんとうに簡単に設定できるようになったものである。プリンターも台数そろえる必要がなく、メンテナンスはかえって楽かもしれない。


2000/10/10(火)ハッピイ・マンデイ?

連休明け。「休日法案」では飛び石連休になったときには連休にする、という案もあったような記憶もあるが、都合のよい擬記憶かもしれない。

院・研究法は「平均値の標本分布」の話で、検定や推定のもっとも基本的な部分である。

続いて学部・研究法は「相関係数」。こちらは最初に「なぜ統計か」という話から始める必要がある。今日は「テレビ視聴やビデオゲームで遊ぶ時間と非行や暴力的行為の関係」についての新聞報道を例にした。相関関係そのものではないが、「少年犯罪は増えているか?凶悪化しているか?」についての記事も例にした。「統計データ」の解釈の問題と、この記事のなかに書いてある「原因を心のなかにもとめる傾向」についての警鐘には耳をかたむけるべきだろう。あたりまえのことではあるが、「心理統計」の講義には良い実例が必要。

続いて院・特殊研究。うーむ。データの事後処理はいろいろ問題多いなあ。調査前に結果の整理についてのイメージがなかったのだろうか。

鴨川のカップルは見たことがないけれど、香港の半島側の海に面した散歩道にも大変多数の「等間隔カップル」がみられます。


 

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