大学往来 

■大学往来インデックス


2000/11/12(日)入試

最近は多様な入試機会ということでいろいろな入試がある。今日は推薦入試があった。わたしもある学科の入試業務を行った。ちょっと気になったのは、大学の内容についてほとんど調べていない学生が少数ながらいたことだ。受験生の情報源は、受験雑誌や進路指導の先生の指導、なかまうちでのうわさなどいろいろだと思うが、大学側としては最近はいろいろな機会に大学の紹介や説明を行おうとしているので、かなりの情報を知ることができるようになっている。これらの機会や情報を十分に利用した上で「選択」してほしいものだと思う。

待ち時間に先日購入したメモリーをDellのデスクトップに増設。メモリーはまたまた下がって128MBで6980円と格安だった(PC100、もっと安いところもあるようだが)。おかげで当初の予算でほぼ2倍の増設をすることができた。


2000/11/9(木)とっかかり

午前中知覚心理学。痛覚の測定、心理尺度の説明。実験室での「実験痛」は「臨床痛」と異なるところがあり、実験の難しい対象であるが、いくつか卒論でとりくんだ学生がいるのでその実験も紹介した。

ごごから卒論相談は3名。Tさんはほぼ実験終了しているのだが、データ整理にはもうすこし「自主性」を発揮して、得られたデータをよく見てほしい。Nさんの卒論でつかうAVタキストのプログラム。すこし「自主性」を感じられるようになってきた。Nさんばかりではないだが、テーマも決定してあとは取りかかるだけという段階で、実験にとりかかる前に足踏みしている期間が長く見られることをよく経験する。最初の障害はなんだろうかと思う。「装置」の問題なのだろうか?このあたりの障壁を乗り越えるには「聞く」しかないのだけれど。Tさんのように大学の外で実験するばあいには、いろいろ連絡したり先方の都合に合わせなければならない。このような社会的な約束があるときちんと進むようだ。

ゼミの「見学会」ということでゼミの3年生はいろいろ準備してくれていた。わたしは、最初にゼミの内容と「方針」を説明し、これまでの卒論課題(タイトルだけであるが)の資料を簡単に説明した。3年生には卒論でとりあげたいテーマ(または興味のあるテーマ)について短く話してもらった。このような時には、あらためて一年間の違いを感ずるのである。


2000/11/8(水)方法

午前中はゼミ3年生が3名やってきて研究テーマについて相談。提案したテーマのなかの一つを選択してくれた学生があった。これは長年やってみたいと思っていたものだ。もう一人は性格特徴についてということで、これも私の指導できそうな方法をつかっている本を参考書としてわたす。あと一人についてはいくつか候補があったが、それらの関連がつけられずもう少し考えて、ということにした。私の「理想」は特定の○○心理学という区分をなくしたいということにあるのだが、しかし、研究というのはある方法をとらなけらばならない。その制約を対象そのものと混同しないようにしたいものだと思う。

つづいて卒研のAVタキストのプログラムを完成。画像メモリーの件で研究法関連のメーリングリストに助けを求めたのだが、残念ながら応答なし。潤沢なオプション付きなのか、あるいは意外に普及率低いのか?。このJさんのプログラムでは文字刺激なのでそれほど制約は感じないが、Nさんの方は画像をつかうので一部計画を縮小した。

午後は院・適応学の講義。今日は聴覚障害と人工内耳の話。つづいて短い会議二つ。二番目の会議は来年度の教育予算関係である。申請内容はさまざまだ。妥当なものも、ちょっと問題あるなあ、というようなものもある。

帰りの列車でK学部zさんと一緒になり、今週末の推薦入試のことなどを話しながら、柏まで。


2000/11/7(火)軌道修正

午前の院・研究法は対応のあるデータについての平均値の比較についてSPSS実習。時間たりなかったが、のこりの時間で「両側検定と片側検定」「検出力」の話。さらに研究のスタートの参考として「医学的研究のデザイン:研究の質を高める疫学的アプローチ」(S.ハリー、S.カミングズ、メディカルサイエンスインターナショナル、1997)の第一章と第二章を紹介。第一章は「さあ始めよう」、第二章は「研究テーマを考える」で、とくに「研究プロトコール」をまとめるというところは参考になると思う。内容は医学的な研究例であるが、方法的には心理学にもおおいに参考になる。

午後から学部研究法。こちらは因子分析の話の最終回として、卒論の紹介をした。ヒトの性格・行動特徴を因子分析によって整理してまとめるという内容である。他に因子分析の適用分野として(因子分析の生まれたもともとの分野だが)知能の研究例と、産業界における官能検査やイメージ調査でも主要な方法として使われているということを話した。

因子分析の話はもうすこし詳しくやりたかったのだが、やはり予備的な知識の準備が必要なことを痛感。学部の授業ではこれ以上はちょっと無理だと判断した。無理という意味は、こんな方法がある、ということだけでも知っているのは有用であると思うが、研究法の授業なのに「お話」になってしまう可能性が高いという意味。研究法は統計でいえば、それを実際に「つかえる」ようになることを目標にすべきと思うので、来週からは地道に統計的な方法の基礎にもどることにしよう。

院特別研究は今日はとくに分析するデータと話題がない、ということで「医学的研究のデザイン」の文献紹介のみ。いま修論まとめているヒトはこのプロトコールを再度検討してみると全体の構成をより明快なものにできるでしょう。

朝方からの雨があがり、学校をでると川面に霧がただよいなかなか幻想的な景色だった。


2000/11/6(月)被験者

卒研では毎年被験者集めにくろうしている学生もあるようだ。なにしろ心理学専攻の学生数はそれほど多くないし、実験的にナイーブでないかもしれない。クラブ活動などで活発な学生はいろいろ声をかけて十分な数の被験者を確保する学生もいる。一方心理専攻には「内気」な学生も少なくない。こちらは被験者集めでも悩んでいるようだ。このような学生にとっては、だれかに被験者をたのむのはかなり憂鬱なことなのかもしれない。もしかしたら被験者問題はテーマ選択よりも大きな障害になっているのかもしれない。

実験的・調査的な研究を奨励している以上、このように学生の「社交性」に依存するのは卒研を必修にしている制度上、好ましい環境とはいえない。考えなければいけない問題である。もちろん単に多くの被験者を集めればよいというわけではないし、どの程度の規模で目的を果たすことができるのか、という見積もりができることが望ましいのではあるが。

米国の大学の実験心理学系の科目では「被験者」をやると一定得点が与えられるように制度化されている大学もあるようだ(被験者プール制)。

日本ではこのような例があるのか知らないのだが、個人的に担当科目の出席扱いにこのような処理を与えている先生はあると聞いている。ただし、授業の一貫として考えた場合には、被験者をやるだけでは実験の内容はなかなか理解できない面もある(わかってはいけないたぐいの実験もあるだろう)。解決策としては、被験者クーポンを出して、卒研に一定回数の被験者を行うことで必修科目の実験実習の得点にカウントできるようにするのが現実的かもしれない。

私が学生のころも同様に学生数がすくなかった。被験者を多く経験することで「被験者錯誤」を犯さないように修練しなさい、というような指導を受けたものだ。

午前中前回の実験実習2のデータで因子分析を SPSSで。やはり被験者数の問題かデータが因子分析に「適さない」データで、通常の計算方法では解けなかった。実験実習1はマッカロー効果の2週間後のテストをやり、インストラクション。今回のグループのデータはかなり明瞭なものだった。つづいて実験実習2。午前中の計算結果を説明したが、肝心の相関係数の理解が半数程度であやしいようだった。


 

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