2000年度・人間関係研究法(心理学研究法) 授業「評価」アンケート結果(2001/1/16実施)

昨年度同様にK学部の授業「評価」アンケート用紙を借用して定期試験と同じ時間に配布して実施した。無記名方式で。受験者数は50名(女子6名、男子2名)であった。心理学専攻の2年生が47名、3年生1名、他専攻の3年生1名であった。このうち3名は無回答であったので、合計47名分のデータである。

アンケート項目は4つのグループからなっている。昨年度同様にK学部の「評価」用紙を借用している。

これらの質問に5段階の「評価」値を回答する。ただし、「あてはまらない・わからない」という選択肢もある。このほか、自由記述方式のコメント欄が用意されている。

以下集計結果を示す。なお、一部データ総数が人数と合わないところがあるのは、無回答あるいは「あてはまらない・わからない」との回答がいくつかあったためである。

図1は授業内容についての結果である。Q1-aは「内容・テーマに対する興味」を聞く項目である(赤)。評定値1,2が1/3程度あることが目立つ。この科目は必修であるために興味がなくても履修せざるを得ない、ということだろうか。同様に、「授業内容はわかりやすかったか」(Q1-c 黄)も1および2のランクがあることが目立つ。Q1-b(青)は「実務的・実際的情報が豊富だった」か、Q1-d(茶)は「授業は全体としてまとまっていたか」という質問である。

計算などに「苦手意識」をもっている学生も多いようだ。英語といい、数学といい、それまでの教育というのはわざわざ「数学ぎらい」や「英語ぎらい」を育てているのではないか、と思うことさえある。この授業では足し算やわり算の計算程度で、数学はほとんどつかわないし、心理統計は具体的なデータをあつかうものなので、このあたりの「認識」はすこしはかわったかもしれない(ことを期待)。

図2は教材や授業の方法についての項目である。青い棒グラフ(Q2-b)は配布した資料についてのものでおおむね「役に立った」といえるだろうか。しかし、「内容がわかりやすかったかどうか」という項目(Q2-a、赤)は評定値3がもっとも多く、それほどわかりやすかったわけではないようだ。Q2-b(青)は「プリントや資料が役にたったか」どうかという問いだが、この科目は持ち込み可であるため、試験のために役にたったということだろうか。

(この種のアンケートはまだ改良しなければならないと思う。借用しておいて言うのもなんですが。「何の役にたった」のかというような基本的なことがらも多義的である。このアンケート用紙に限ったことではないが、評定値を求めるばあいにはどうしても中間的な評定値、どちらでもない、や、わからない、が多くなりがちである。この評定値も多義的で解釈がむずかしい。またQ1-bの「実務的・実際的情報」というのもその意味の理解のしかたはさまざまなものだろう)

Q2-c(黄)は「視聴覚教材が効果的に使われていたか」という項目についての回答の分布である。例年、学部ではこの項目の得点は高いところに分布する。この授業ではOHP、パソコンのプレゼンテーション、手書きプリント、ワープロプリント、電算室でのパソコン画面(OHC)を通じての講義、パソコン実習、など「視聴覚」機器を総動員した「成果」であろう。なお、授業の1/3程度は電算教室で講義・実習を行った。

今年度は準備ができなかったが、「検定」の理解の条件となるサンプリング分布(偶然分布)についてはパソコンでアニメーション的なサンプリングのシミュレーション実験を供覧すればもっとわかりやすくなると思う。来年度はこれを付け加えていきたいと思う。

図3は講義のときの話し方(Q3-a 赤)や進度(Q3-b青)についての質問で、これから見る限りでは、授業の進め方にはそれほどおおきな問題はなさそうだ。しかし、それほどすばらしいものでもない。Q3-c(黄)は「質問によくこたえてくれたか」という項目だが、こんなに質問あったかなあ。電算実習中巡回して質問を受けたり、話しかけたりしているので、それについての評定かもしれない。

図4。授業への参加度(Q4 自己評定)では評価値1、2があることが気になる。必修科目であるということによるのだろうか。また、参加度3というのは何を示しているのだろう。一般的に、このようなアンケートへの回答数値は多義的で解釈は難しい。

Q4(参加度の自己評定)を除いた、Q1-Q3の評価値について個人毎に平均評定値を求めた。とりあえず、このQ1からQ3の平均値を授業「評価」値としてみよう。その得点分布は図5のようであった。おおむね3以上に分布しているが3を下回る例もある。なお、個人間の評定平均値は3.4(標準偏差0.5)であった。

図6は参加度と個人毎の評定平均値(図5でもとめたもの)の関係をみたものである。参加度と平均評定値の間には正の相関があるが、これはまあ当然の傾向というべきだろう。しかし、昨年度も同様の傾向がみられたことであるが、完全に比例的な関係ではなくて、積極的に参加していると自己評定している学生群では、平均評定値が参加度自己評定値を下回り、参加度にみあった満足度を与えていない、という可能性がある(「もの足りない」状態)。他方、参加度を低く見積もっている学生群では授業の平均評定値は参加度を上回る傾向にある。

事後解釈にすぎないのであるが、自己の参加度と授業そのものについての「評価」は一応区別して評価されているようである。

自由記述欄には合計7件の回答があった。【】内は私の感想。

この講義の内容は研究法、特に心理統計についてのものなので、他の科目よりも客観的にテストの結果を出しやすい(いえけっして他の科目が客観的でないという意味ではありませんです)。下に今回のテストの採点結果を示した。全体としては、二峰性の分布となっているように見える。もしかすると3グループの混合のようにも見える(某委員会の方へ)。 FはFemale、MはMale。

ある学生は自由記述欄に「質問にも丁寧に答えてくれたので、これ以上要求することはありません。あとは生徒のやる気次第だと思います」と書いてくれたのである。この言葉はわたしが長年、講義の目標とするところだったのである。実際にこの言葉を読んで、うれしいというかほっとしたというかある種の充足感を得たのである。しかし、そうではあるのだけれど、依然として学生の半数程度は心理統計的な考え方やデータの見方について不足の状態にあると言わなければならないのである。

私は時間さえかければ心理統計に限らずどの科目でも一定の水準の理解を得ることは可能だと信じている。成績の個人差はいくつかの人為的な要因によって生ずる人為的な差異という面がある。とくに大学という環境においては、教授方法・授業時間という制約がそんざいしている。これらは人為的な障壁であるから、いろいろな工夫により乗り越えることができるものであると思う。ただ、学ぶということの価値感や「やる気」の獲得については、私の個人的な努力によっては越えがたい要素が存在しているようにも感じている。