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2001/4/29(日)相談

昼からM先生が相談したいことがある、ということで新宿へ。M先生の専門分野の入門書を出したいということで、カラー図版を多く入れたいが、価格がかなり高くなってしまうらしい。それなら、ということで、「電子出版」という方法も可能性としてはありますねえ、という提案をした。パソコンが必要になるが、今ならそれほどの妨げにはならないのではないか、と。しかし、その前に片づけなければならない仕事があって、その次に、というお話だった。この分野は、授業でもよく紹介するのだが、入門書が少なくて、私としても早く出版されることを期待している。

そのほかいくつか共同研究の話。M先生とはかなり長い「おつきあい」になるのだが、一緒に仕事をしたことがなかった。ちょうど良い機会なので、お手伝いできることがあれば、ということで計画をすこし立ててみることにした。


2001/4/28(土)近くの火事

昨晩おそく、自宅近くの商店街で火事。やけにサイレンの音がうるさいなあ、としばらく気がつかなかったのだが、窓を開けると、小さな商店街の通りが見えるのだが、その真ん中付近からもくもくと白煙がたちのぼっていた。木造の家屋も多いところだ。すでに炎そのものは見えず鎮火した直後だったようだ。あたり一面、焦げ臭いにおいがただよっていた。

昼過ぎ、火元を見に行った。常磐線線路ぞいの小さな和菓子屋さんの倉庫と店舗の無惨な焼け跡があった。倉庫の方はてっきり廃屋と思っていた。この庭の外には夏にはヒマワリがきれいに咲いていたところだ。


2001/4/26(木)かんな削り日本一

夜、NHK人間ドキュメント「腕に覚えあり・かんな削り日本一」というルポを見た。人間はどこまで熟練した技能を身につけることができるのだろうか。「腕に覚えのある」大工さんたちがかんな削りの限界に挑戦する全国大会の様子であった。かんなくずの「薄さ」を競うもので、記録は5ミクロン台だった。このような技術をもっている職人は全国でも数少ない。現代的な建築の場面ではほとんど生かすことができないものだが、日常の仕事とは別に技術に挑戦する職人は、職人としての誇りを守るという意地と、純粋に技術的な限界を極めたいというある意味obsessionのように鍛錬を続けている。また、「顔つき」がどこか科学者の風貌のようにも見えた。そのような職人としての技術を示す機会はこのような全国大会しかない、という事実は残念なことだ。

でもこの全国大会に集まっている様子が緊張感の中にも実に喜びに満ちている様子で、来年もまた会おう、という感じで別れていく姿はなかなかいいものだった。私も「学会」にこんな風に参加してみたいなあ、などど。

この方は普段はやとわれ棟梁として電動工具やなにかをつかう工事現場で仕事をしている。彼の技量を発揮できる「現場」では全然ない(手をかけた数寄屋風の茶室が彼の作品であるが、最近は建築の依頼がほとんどない。かれはそのために茶道や陶芸なども学んでいるそうだ)。

最近の「主流」は「素人」でも家が建てられるような「工法」で家を建てていく。そこでの彼の仕事ぶりはやはり職人気質を感じさせるものだった。電動のホッチキスみたいな機械をつかって壁板を固定していくシーンがあった。かれはその釘の頭が表面から出ていないかキチンと確認していた。もし釘が飛び出ていると、壁紙職人に迷惑がかかる(「あの大工はこの程度の仕事しかできない」と馬鹿にされるんだよ、口では言わないが、職人はそう思っているもんなんだ」)といってほとんど素人同然の同僚を諭していた。

かんなの刃を研ぐシーンでは、目では確認できない「刃こぼれ」を指先(触覚)で確認する場面があった。簡易型の顕微鏡のような道具で拡大してみると、砥石の粉の大きさ(!)の刃こぼれが確かに存在していた。これなどは通常考えられている「視覚優位」の常識を覆す良い例だと思う。映像を残していなかったのが残念だが、触覚の話題につかえそうだ。

半日以上も費やして、ここまでとぎすまされた刃は、しかし、逆に、薄くなりすぎて木の表面にあるホコリ(!、きょうは!が多いなあ)を噛んでしまい、大会では刃こぼれができてしまった。道具とそれをつかいこなす人間の技量はほんとうに見ていてすばらしい。この方は代々大工さんの家系らしかったが、他の大工さんも小学生のころ自宅の新築のときに見た大工仕事に惹かれて大工さんになったというような方がいた。現在ではこのような「職業選択の自由」が失われてしまっている。私は大工にはならなかったが、親戚に大工さんの家系があって、子供の頃その仕事の様子を見るのは楽しく飽きないものだった。

新内閣発足。感想は「党内改革だけでは変わり映えしない」というものだ。意外性はたしかにある。小泉氏の勝利で自民党は延命するかと思われたが、やはり、というか、むしろ崩壊への流れは加速するのではないかとも感じた。いずれにしろ、早めに、「憲政の常道」に従って解散総選挙をするべきだと思う。


2001/4/24(火)

午後から、学部研究法。統計的仮説の検定の基本的な考え方の続きと、統計数値の読み方(どのようにしてその数値が得られたかというデザインを抜きにして、統計数値だけでは正しいとも正しくないとも言うことはできないこと)、第一種の過誤、第二種の過誤について。

大学院のほうは行動適応学のあと、方法論。今年は内部進学者の方が多いため推測統計学の基礎は学部で話しているので、研究デザインを中心にして進めようと考えている。テキストは、医学研究での統計学の入門書である折笠秀樹(著)臨床研究デザイン:医学研究における統計入門、真興交易医書出版部1995を副読本にしている。医学研究は実践的な統計ユーザとして心理学の研究デザインと共通する部分が多いし、統計的法則と個の問題も共通している。

電算新システムはどうも不安定である。きょうはOHC「配信」プログラムが途中から応答しなくなって、ハング。


2001/4/23(月)新歓

午後から実験実習。今週はインストラクション。今週が最初のサイクルということで説明するのはやはり2年生の方が難しい。

夕刻から専攻の新入生歓迎会。学生ホールにて。N君はなかなかどうにいった司会者ぶりだったが、もう少し話せる時間もあるとよいなあとも思う。歓迎のことばは「将来どんな方向にすすむべきかチュウボウを脱してじっくり考えられるとよいでしょう」とネットジャーゴンを含めたのであるが、どうも意味がよく分からなかったようだ。ネット廃人になってはこまるが、ネット系諸要素を全く欠いているのもちょっと寂しいなあと思う。


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