心理学研究室伊田

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 生活改善委員会 2002/5/20

 

心理学と仕事(2)

今年の高校生向けの「大学案内」に心理学専攻のOBが二人登場している。前回の菊池君に引き続き、沼田君のことをすこし書いてみたい。

このキャッチコピーは、心理学「が」ではなくて心理学「を」の方が良いのではないかと思う。しかし、「が」という表現をとられたのは、パンフレットの制作会社のライターの方にとっても心理学の応用範囲は非常に広いということはおそらく予想外のことで、ある意味で驚きであったからではないだろうか。

沼田君は記事のなかに書いてあるように卒業後いったんソフトウエアの会社に就職したあと大学院に進学した。大学院進学の際には相談を受けたので、計量心理学や実験心理学を工学(デザイン)とくに人間工学の分野に応用する新しい領域を開拓されたM先生を紹介した。M先生はTM大学の心理学研究室から別の大学の工学部に移られたばかりで、実験心理学の訓練を受けた学生を求めておられたのである。沼田君は修士課程を終えて、高砂香料に就職が決まった。計量心理学や実験心理学の「応用」領域として「官能検査(センソリー・テスト)と呼ばれる分野がある。食品や化粧品などのメーカは早くからこの分野に力をいれていたが、他の業種メーカでもこのような分野の重要性が認識されるようになてきている。最近では工学部においても「感性工学」という分野が確立されつつあるようだ。この分野における人間の感性や知覚・認知の測定法は伝統的な心理物理測定法や心理尺度構成法そのものである。香り産業の有力な企業である高砂香料はもちろんこの分野に早くから注目していて官能検査の部門を充実させていた。現在は、香り関係のトレンドである「香りとストレス」についての仕事も始まっている、ということである。

沼田君も最初は「カウンセラー」にあこがれていたようであるが、学部でいろいろな心理学に触れ、結果として「心理学を生かす仕事」に携わるようになった。沼田君の努力があったことはもちろんだが、偶然とはおもしろいものであると思う。今回の「案内」の作成過程で、制作会社のライターの方に取材後一度お会いしたのだが、そのとき、「おふたりとも仕事がとても面白いと言われ、仕事にてごたえを感じている様子に感銘を受けた」といっておられた。

社会のいろいろな局面に人間的条件が存在している。そのなかには心理学の知識があればすぐにきづくこともあるだろう。実験心理学マインドをもって人間的条件を発見し、解決することも、社会のなかで心理学を生かすという意味で「幸せな」仕事につながるのではないだろうか。そしてこのような「心理学の仕事」は、実はわれわれが予想しているよりもはるかに広い範囲にわたっているのではないだろうか。ある雑誌にexpand your mindというスローガンが掲げられていたが、まさに「心をひらいて、ものごとにあたろう」である。

(上の記事の全文はこちらで。ファイルサイズがやや大きいです。もとの「案内」にはポートレート写真付きなのですが、 WEBではカットしてあります。)

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電網恢恢?