見学合宿・2006夏

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ゼミ合宿日誌 2006/8/30〜9/1

はじめに

 ゼミで見学の合宿をするようになったのは、社会の中で心理学がどのように「役だって」いるのだろうか実際に見えてみよう、ということで、ともかく現場を見て見聞を広めよう、と思い立って以来のことである。このようなことを思い立ったのは、古い話になってしまうが、私が教員になったばかりのころ、読書会に参加していた学生のS君に「心理学は何の役にたっているんでしょうか」と聞かれたことに端を発している。それまで学生だった私も同じことを考えていたが、この時からその疑問にたいして私なりに答なければならない立場になった。
 特に、実験心理学や基礎心理学を勉強しようとしている人達にどのような回答をすればよいのか、私なりに考えて、おそまきながらこの見学合宿をはじめたのは、広い意味で心理学の仕事にかかわるようになった卒業生もでるようになった10年ほど前のことである。一般には知られていないところで「役立っているホンモノの心理学」を学生諸君に知ってほしいと思う。

 このような点から見学先を探してきたのであるが、訪問先は多忙であるから、毎年日程調整には苦労しているところである。今年は資生堂ビューティソリューション開発センター味の素川崎工場科学技術館航空医学実験隊を見学する機会に恵まれた。

学生諸君の感想があがってきました。

  • 山崎君の感想kengaku2006_yamazaki.html 2006.10.12
  • 三浦君の感想kengaku2006_miura.html
  • NEW すっかり遅くなってしまいましたが、ゼミ合宿の感想があがってきました。あらためて見学先の皆様には御礼もうしあげます。 2007/2/9 荒田君・清和君・遠藤君・重藤君・鶴見君・安達君・平田君よりkengaku2006_kansou1.html

資生堂
 午後、上野駅にて集合し、五反田にほど近い資生堂ビューティ・ソリューション開発センター(旧ビューティ・サイエンス研究所)へ向かう。(詳しくはこちら

 見学を終え、代々木のオリンピック記念青少年センターにチェックイン。センターは代々木公園に隣接した都心とは思えない環境と立地条件が良く、また、非常に安価でもあるためこのところ毎年のように利用している。

 宿舎内で夕食をとる。カフェテリア式の食堂は午後7時までということで間に合わず、レストラン「とき」にて。私は「酢豚定食」にしたが、旅行中はカフェテリア形式の食事の方が必要と思われる食事をとることができて、バランスがよいと思う。

 南新宿方面を望む夜景


見学二日目

 参加学生はほとんどが前日近所のコンビニで買った軽食を朝食にしたようだ。私はたいていD棟(引率者用宿泊棟)上のレストラン「ふじ」で洋定食(500円なり)にしている。ここは眺めがすばらしく、代々木の杜のむこうには新宿方面、六本木方面など東京の朝の景色を楽しむことができる。

 二日目、南新宿方面を望む朝の景色

味の素川崎工場

 午前中は「味の素」川崎工場の見学にでかけた。くわしくはこちらへ。


品達
 鈴木町駅から品川駅へもどり、京急ガード下の「品達」で昼食をとることにした。人気ラーメン店や「どんぶりもの店」が集まっているミニ・テーマパークのような所だ。それぞれ好みのラーメン店を選んで並ぶことにした。私は並ぶのはどうかと思い、M君ほか4人で「きびや」の梅塩つけ麺にした。スープは鳥と鰹?ですっきりしているがこくがあって、腰のある太麺でおいしかった。超人気店の「なんつっ亭」に並んだグループは我々が食べ終わってベンチに座って待っていた頃やっと順番が来たようで40分待ちくらいだっただろうか。ラーメンにはいろいろな種類と特徴がある中で、独自の特徴を出し、その味を受け入れられ、しかも、それを維持することは大変なことだろうなあと感心した。


科学技術館

 見学二日目午後は竹橋にある日本科学技術館へ移動。科学技術館には知覚心理学関係の常設展示がある。くわしくはこちら

 館内見学をしているうちにそろそろ夕刻になり、ラッシュの始まる前に宿舎へもどる。学生諸君も猛暑のなかなれない移動でだいぶ疲れたようすだ。夕食はどこか外で、ということで参宮橋にもどり商店街を歩いて「お好み焼き」屋さんに決め、予約。一旦宿舎に戻り、一休みしてから出直してミニコンパ。

 今風の若いマスターがてぎわよくお好み焼きをやいてくれた。最後にマヨネーズをかけるかどうか聞かれたので、お任せにしたのだが、直径2ミリほどの絞り出し口が一列に6個ほどならんだ容器をつかって実に芸術的なお好み焼きとして仕上げてくれた。その手際のよさとお好み焼きの姿の変化に一同感嘆の声をあげた。あの容器はふつうに売っているものなのだろうか。わたしは久しぶりにギネスを飲んでおなかもいっぱいとうことでお開き。帰りにコンビニによって飲み物などを買って、宿舎へ戻った。(お好み焼きやに忘れ物をしたのだが、店員がおいかけて渡してくれた。)参宮橋あたりは都心だが住宅街で公園がちかいせいか犬の散歩をよくみかけた。


見学最終日

 合宿三日目の朝、雨模様。最終日は午後から立川なので、ふたたび「ふじ」でゆっくり朝食をとる。学生の部屋はセルフサービスのため、各室シーツの返却や後片付けをすませたあとチェックアウト。途中新宿駅でコインロッカーに荷物を預け、中央快速線10時37分発の特快で立川へ向かう。見学先の栄町方面のバスの時刻など確認してからすこし早めだったが駅ビルで昼食をとることにした。やはり12名ほどとなると予想より時間がかかり、結局見学先へはタクシーに分乗して移動したが、3〜4人ずつ分乗するとバス代と変わらない料金だった。

航空医学実験隊

 合宿最終日の見学先は立川にある航空医学実験隊である。くわしくはこちらへ。

まとめ

 心理学の仕事の現場をいくつか見てきた。限られた経験ではあるが社会の中での心理学の仕事の「現場」には次のような共通性があるように感じている。(どのような分野であれ)心理学の仕事は人間に関わるものであり、個人は生物的な条件、社会・文化的な条件のもとに存在している。したがって、「現場」で解決すべき課題は学際的・業際的な性格を本質的にもっている。このような「現場」で「心理学を生かす」ためには心理学に固有の知識や方法をもつことが前提となる。「現場」は本質的に「学際的・業際的」であるから、課題の解決にあたって、心理学もその中の一つとして関わっていることを認識することが大切である。日常生活の中にはあまねく「人間の条件」がかかわる「現場」が存在している。それらの現場は心理学を生かすことのできる現場にほかならないのである。

 ある仕事が達成されている背後には非常に多くの人々や組織の関わりがあること、表面に現れる一般にわかりやすい専門家のみでなく、それらをささえている多くの人々の専門的な仕事や組織に注意を向けることも必要だろう。そのようなさまざまな場所に「心理学の仕事」が存在しているのではないだろうか。

 他方において、基礎心理学の果たしてきた「貢献」について教える課程は大学教育においては不足しているように思われる。資生堂における「価値創造」の過程(「価値」を具体的な製品として生み出す過程)や航空医学実験隊におけるヒューマン・ファクターの研究によってその一端を例示することができるのではないだろうか。このように考えると「基礎・応用心理学コース」は「実践系心理学」として体系化することもできるであろう。

(反省:今年は二泊三日でスケジュールは余裕があると考えていたが、実際には猛暑のなか都内を移動し見学するのはなれない若い人にとってはややきつかったようだ。次回は見学先を少なくして、宿舎内で予備研究や見学後研修を組み込む、というようにもうすこしゆとりが必要かもしれない。見学先の都合もあるので、見学先によって見学日程を分けて実施しても良いかもしれない。)


臨光謝謝

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